数学 「新・受験数学勉強法」 
            〜読書案内(1)〜
 NO.14 

98.8.8作成

 「将棋と卓球と数学の部屋」に関連のある本を紹介していきたいと思います。

まずは、将棋を数学の勉強法に応用した本から―。

 「新・受験数学勉強法」 根岸世雄(ねぎしときお)著

(注)本の中で将棋に関する内容を引用させて頂きます。

◆まえがき

 私は昔、将棋が強くなりたいと思って、一生懸命努力した時期があった。”勉強法”という言葉で私がまず思い出すのは、その当時の”将棋の勉強法”のことである。そして、この中には”数学の勉強法”に応用しても、大いに効果のあることが含まれているような気がするのである。そこで、本文の中には、将棋の話がいろいろと盛り込まれている。

◆第1章 受験数学に強くなる―父子将棋から

 私の父は将棋を指すのが滅法好きで、私が小学校へ上る前からよく友人を連れて来ては家の二階で将棋を指していた。私も見よう見まねで小さい頃から将棋を憶え、小学校の頃には友達とよく将棋を指した。クラスでは一番強かったように思う。しかし、父には飛車・角二枚落としてもらっても全然勝てなかった。
 中学2、3年の頃だったと思う。ある日学校からの帰りに近所の古本屋に立ち寄り、たまたま、「将棋大観」(木村義雄著)という将棋の定跡の本を見つけ、これを買って帰った。この本の初めの方に六枚落ち(飛車・角・桂・香落ち)の定跡がのっていたので、まずこの六枚落ちでの定跡を憶え、父に勝とうと考えた。
          → (1)”父に勝とう”というような、目標と意欲をもつこと。
 
六枚落ちでは、桂も香もないので、相手の端の方から攻め破ろうとすればよく、上手の対応策も限られている。したがって定跡の分量も少なく、本を見ながら将棋盤を動かして、相手がこう指したら自分はこうすればよいという定跡を全部憶えようとしたのである。
          → (2)”六枚落ちから”というように、あせらず基本から勉強すること。
 
定跡の暗記は大体実行できたつもりで、父に六枚落ちで挑戦したが、父はなかなか定跡の本通りには指してくれないので、やはり何回も負かされてしまった。そこで、単なる定跡の暗記だけではあまり役に立たないことに気がついた。
          → (3)”基本定跡の学習”を、単なる暗記にならぬように労力をかけてやること。
 
そこで私は、単に定跡を憶えるのはやめ、本に書いてないようないろいろな手を相手に指されたときのことを考えた。未熟ではあるが自分なりにそれぞれの対策を研究して、どんな変化にも応じられるように努力した。
          → (4)”つねに自分で考える”ようにして、うろおぼえの定跡をあてはめないこと。
そして、父と将棋を指したあとで、必ずその棋譜を思い出しながら記録に残した。勝った場合にも、もっと良い手はなかったかと考えたり、負けた場合にはどこが悪かったかを徹底的に研究した。
          → (5)”棋譜を残して反省する”ことも怠らずに、失敗を成功に結びつけること。

 相手がどんな手を指すかがいろいろありそうな場合に、もしこう指せばこうする、ああ指せばああするというように対策を研究しようとした。だが、まだ実力が伴わないうちは、これは大変な労力であった。こうすればよいと思った手が実は悪い手であったり、もう少し実力がついてから考えれば、そんな手を相手が指すはずがないとすぐわかる手でも、それに気づかず一生懸命対策を考えたりするしたものである。
 しかし、この一見大変で、無駄な労力を使うように思われるこの勉強法は効果をあげたようだ(今でも私はそれが良かったのだと信じている)。期間にしても1年くらい、対局数としては数十局くらいで、六枚落ちから二枚落ちまで進み、二枚落ちなら大体父に勝てるようになっていた。
          → ※大切なのは”急がば回れ”の心意気

 肋膜炎もなおりかけて家で静養していた頃、退屈しのぎに父の持っていた将棋の雑誌の”詰将棋”を考えた。そしてその雑誌の懸賞に応募しているうちに、詰将棋に非常に興味を持つようになった。
 ベッドに寝ながら、印刷された盤面をにらんで駒を動かすことなく考えていたわけである。それまでの訓練で棋譜を思い出しながら書く習慣がついていたためか、2、3ヵ月のうちに、詰むまでに30手も40手もかかる詰将棋でも全く駒を動かしたりせずに詰めることができるようになって来た。
 その頃のことだが、昼間、盤面を眺めていてもなかなか詰まなかった詰将棋を、夜寝ているうちに夢の中で詰めたという思い出がある。朝、「あっ、詰んだぞ」と思ったら目が覚めて、「何だ、今のは夢か」とがっかりしたのだが、まてよと思ってもう一度その詰将棋を見ると(たしか47手詰だったような気がするが)、実際に夢に見た手順で詰んでいたので驚いたものである。きっと、これではダメ、あれでもダメなどと夢中になって考えていたのが脳裏に残っていたのだと思う。しかし、残念ながら、その後このようなことは二度と起っていない。
          → ※必勝のスローガンは「その場で自分で考える!」 

◆第2章 味方は自分だけ―つねに自分で考える

 ”その場で自分で考えること”とは一体何をすればよいかを”詰将棋”を例にとって考えてみたいと思う。

[問題]
 

 これを見て、まさか”どこかでやった問題と似てないか”などと考えることはないであろう。その場で、”王手の仕方にはどういう手があるか”と自分で考えるはずである。
 ただし、超初心者でない限り、王手には違いないが、明らかにあとが続かないのでダメだとわかる手がいくつかある。
 たとえば、置き駒の金を動かして、「3二金」とか「2二金」とすると王に取られてどうしようもない。
 また、持駒の銀を使って、「1二銀」と打つのも王に取られてダメである。
          → ※数学の問題を解く際にも、これと同じで、「…としたのではダメ」ということも重要な考察の一つである。
 
さて、上記の明らかにダメな手を除くと、あと考えられる王手はつぎの3通りである。
   @2二歩 A2二銀 B3二銀

@の場合
1)「3一王」と逃げれば「3二銀」で詰んでしまうが、”王はなるべく詰まないように逃げる”という約束だから、これはまず除外して、つぎを考える。
2)「1一王」と逃げれば、あと”銀”一枚ではもう詰まない。一つでも詰まないような逃げ方があれば、これは詰め方としては失敗で、したがって、@はダメである。「1二王」と逃げてもやはり詰まないが、上記の理由でこれは蛇足である。
Aの場合
 王の逃げ方はただ一つで「1二王」と逃げることになり、詰め方として意味のありそうな次の王手は「1三歩」だけとなる。しかし、これは「打ち歩詰め」で禁じ手であるから「1三歩」と打つことはできず、結局、Aも詰まない。
Bの場合
1)「1一王」と逃げて、つぎの意味がある王手は「1二歩」だけで、これは「同王」と歩を取ることになる。
 そのあとは、「2三銀成」と王手をすればよく、「1一王」、「2一王」のどちらへ逃げても、「2二金」(あるいは「2二成銀」)で詰みとなる。
2)「1二王」とはじめから逃げれば、「1二歩」「同王」の2手がないまま上の手順と同じように詰んでしまうので、”王方はなるべく手数が長いように逃げる”という約束から、1)の方が正解となる。
 以上のような考察をまとめて、

[解答] 3二銀、1一王、1二歩、同王、2三銀成、1一王、2二金まで7手詰。

◆第3章 合格への基本戦略

[問題1]

 図の問題において、詰め方は「2九香」と打つことになるが、詰将棋にあまり慣れていない人はこれで詰んでしまいそうな気がするのではなかろうか。すなわち、
1)「1一王」と逃げれば、「2二香成」まで。
2)「1二王」と逃げれば、「2三香成」、「1一王」、「2二金」まで。
3)「2二○」と合駒をしても、「同香成」と合駒○を取られてそれまで。
 ところが王方にはうまい防ぎ手があって、そう一筋縄ではいかないのである。
4)「2三○」と合駒をする手が妙手で、もし、

 (a)「同香不成」と取って王手をすれば、「1二王」とされ、以下「2二香成」、「1三王」となって上部へ脱出されて詰まなくなってしまう。そこで(a)はダメであるから、
 (b)「2二歩」と打つしかない。合駒○が飛か金で「同○」と取れる場合でも、取れば「同香成」で詰んでしまうから、「1一王」と逃げる一手で、そこでさらに「1二歩」と打つ。
 ここで、○が何かで分かれ、
 イ)○が飛、金、桂、香、歩の場合には、「1二同王」と取るしかないので、「2三香成」以下詰むことは容易にわかる。
 ロ)○が角、銀の場合には、「1二同○」と取ることができる。そこで、さらに、「2一歩成」、「同○」で、もし、○が角なら、「2二香成」で詰むから、王方としては合駒の○に銀を使うのが最強の頑張りということになる。
 ここで、もし持駒が何もなければ、「2一香成」とするしかないが、これでは「1二王」と逃げて上部へ脱出されてしまう。
 ところが幸い歩があと2枚あるので、「1二歩」と打ち、、「同王」、「2三香成」、「1一王」に再び「1二歩」と打てるから詰むことになる。
 結局、問題1の正解詰手順は

「2九香」、「2三銀」、「2二歩」、「1一王」、「1二歩」、「同銀」、「2一歩成」、「同銀」、「1二歩」、「同王」、「2三香成」、「1一王」、「1二歩」、「同銀」、「2二金」まで15手詰

[問題2]

 図の問題2はいわゆる詰め将棋ではなくて、「詰むかどうか?」という問題だと思って頂こう。結論を先にいってしまえば、実は、

「詰まない」

のであるが、初心者にはこれが詰まないことを見出すのは容易でない。
 まず、前の問題1と同じく、「2九香」と打つことから始める。今度は、前の問題でやったばかりなので、「2三○」がすぐ思い浮かぶであろう。

1)合駒○が角、銀、桂、香、歩の”2二の地点”に利かない駒ならば、「2二金」と進めば「同王」と取るしかなく、続けて「2三桂成」と行けば”2九にいる香”がものをいって詰んでしまう。したがって、合駒○は”2二の地点に利く駒、すなわち、飛か金でなければならないことがわかる。
2)合駒○が「飛」の場合には、「同香不成」と飛を取ってしまえばよい。すなわち、「1二王」と逃げても、たとえば、「1一飛」、「同王」と取らせて「2二香成」とすれば詰む。
 そこで、最後に残るのは、
3)合駒○が「金」の場合である。
 今度は、もし「同香不成」と金を取ると、「1二王」とされて上部への脱出を防げないから詰まない。そこで、この場合は「3一歩成」と行くしかない。これに対し、
 (a)「同王」と取れば「2三桂不成」で金を手に入れ、「2一王」、「2二金」で詰むから、
 (b)「1一王」と逃げることになる。しかし、「2三桂不成」と行き、「1二王」、「1一桂成」とすればよい。
 これに対し、「1三王」と逃げ出そうとしても、いま手に入れた金を

「2四金」と打てば詰んでしまう。
 以上の考察を見る限り、「この詰将棋は詰む」と結論できそうな気がすると思うが、諸君はどうだろうか。
 ところが、上の考察には盲点があって、王方の応手は最善ではなかったのである。そして、この最善の応手を指されると、最初にいったように詰めることができなくなってしまう。では、その最善の応手とは何か?
 もう一度、上の図を見て頂こう。この図の香の位置は、「2九香」でなくても「2八香」、「2七香」、「2六香」、「2五香」でもよいのだが、もし、「2四香」だと話は変わってくる。
 これでは「2四金」と打てないので詰まない。
 したがって、王方としては、最初に「2九香」と打たれたとき、いきなり「2三○」と合駒をせず、その前に、「2四□」と合駒□を打つ対策が考えられる。このとき、詰め方は「同香」と取るほかはなく、そこで先程のように「2三金」と合駒をする応手が最善なのである。
 ただし、今度は”持駒に□を持っている”ことになるから、このあと、「3一歩成」、「1一王」と進んだとき、

△印へ「1二□」または「2二□」と王手をすることができるようだと、やはり詰んでしまう。
 したがって、□はそのような王手ができない駒、すなわち「桂」でなければならない。
 そして、□が「桂」ならば、この持駒は何の役にも立たず、どうしても詰まないことがわかる。
 この「2四桂」という合駒は全く不思議な手である。もしこの手をひとりで見つけ出したのなら、その感激はさらに一層高まったであろうが、残念ながら私が見つけ出したわけではない。当時、父の持っていた将棋の雑誌の中の解説を読んでこれを知ったのである。
          → ※数学の勉強でも同じことで、何から何まで自分で考えて見つけ出そうとしても、なかなかそうはいかない。なるべく自分で考えようとする努力も忘れてはならないが、ときには、「先人達の見つけてくれたすばらしい技術」などを”感激”をもって受け入れ、自分の得意技の一つに加えていこうではないか。

 ここで、この章で私がいいたかったことを、詰将棋の問題を思い出しながらまとめておこう。
(1)問題1の詰め方を憶えたり、問題2は詰まないことを憶えるというように、自分の知らない
          「いろいろな基本技術を憶える」
ことをどんどん実行してもらいたい。
(2)この際、問題2の「2四桂」「2三金」の合駒のような
          「キーポーントを中心に憶える」
のがよい。
(3)さらに、問題2は”詰まない”という表面的なことだけでなく、”これこれこういう風にしてどうしても詰まない”という
          「しっかりした裏付けの考察」
のもとに、記憶すべきである。
(4)最後に、決してあせったりすることなく、
          「自分の得意技を一つずつ増やす」
つもりで着実に進んで欲しいと思う。

 

 紙面の関係で、以下省略しますが、なかなか興味深い内容でした。くわしくは、本を買って読んで下さい。


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