| 数学 「坂村健講演会」 〜コンピュータの勉強の仕方〜 |
NO.141 |
2004.7.15作成
先日、『坂村健講演会「トロンの夢・ひとの夢」』という本が学校に送られてきました。情報関係の本で、最後に
会場の方からの質問に答えられていた部分が参考になったので、紹介してみたいと思います。
坂村健講演会 「トロンの夢・ひとの夢」
―では最初の質問です。将来コンピュータ関係の研究者になりたいのですが、学生のうちにどんなことを学んで
おくとよいでしょうか。
コンピュータの研究者になりたいならまずコンピュータの勉強をしよう
(坂村) もちろん、いろいろなことを学んでおくにこしたことはありません。しかし、コンピュータが好きで
コンピュータを勉強するには、やはりまずコンピュータの勉強をしていただきたい。
別腹という言葉を聞いたことがあるでしょう。お腹がいっぱいなのに、食後のケーキは平気で食べる、そういう人
がいますよね。デザートは別腹だというわけなんですが、実は、それは無理やり食べているわけじゃないということ
が最近わかってきたんです。
どういうことかというと、好きなものを食べるときに胃が少し大きくなるらしいんです。これは本当なんですよ。
そして、実は頭のほうも同じようなことがわかってきて、嫌いなことをやっているとやる気が出ないけれど、好きな
ことをやるときは記憶力が高まるというか、頭の活性化が行われるということがわかってきたんです。
ですから、学生のうちからコンピュータをやろうと思ったのなら、まずコンピュータの勉強をしたほうがいい
んです。それが大事なことだと思いますね。
ただ、社会に出るためにはそれだけではだめです。やはりいろいろな勉強をしないと。嫌でも、ちゃんとほかの
ことも勉強しなければなりません。
―それは、とにかくまず学校の勉強をきちんとしなさいということですか。
(坂村)そうじゃなくて、好きなことをまずやるんです。そのことをつづけるために、「しようがないな」といいながら
でもいいから、きらいな課目の学校の勉強もする、というのが私の考えです。勉強はやはり、しなくてはいけない
し、やっておいた方がいい。そういうことは後からわかってくるんですね。
―学校のパソコンの授業は使い方ばかり教えている気がします。私は情報の意味の大切さ、IT社会とは何か、
セキュリティの重要性など、もっと基本的なことも教えるべきだと思います。先生は学校での情報教育についてどう
お考えでしょうか。
パソコンの使い方よりも本質的なことを勉強したほうがいい
(坂村)それはいい質問ですね。使い方なんてコロコロ変わっちゃいますからね。やはり情報の本質みたいなところ
をきちんと勉強したほうがいいんですよ。
実は、私もそう思いまして、私の書いた本に書いているのでぜひ読んでください。『痛快!コンピュータ学』
(集英社)や『大人のための「情報」教科書』(数研出版)という本ですが、これには操作方法なんて一切書いてあり
ません。ウィンドウズの使い方なんていうハウツー的なものはどこにも書いてなくて、情報とは何かとか、本当に
学んで欲しいことを書いたんです。
どういうことを書いたのかというと、たとえば、ここにマッチ棒が16本あります。これをぱらぱらっと机の上に
まいたら、上の図のようになりました。それを見せて、「これは何ですか」と訊かれてもわからないですよね。ただ
バラバラに16本のマッチ棒があるだけです。
では、下の図はどうですか。これも上の図とまったく同じで、16本のマッチ棒です。でも、こちらは何となく「SOS」
と読めますね。
伝統的な物理学ではこの場合、上のも下のも同じ16本のマッチ棒であって、まったく差がないと考えます。両方
ともマッチ棒が16本だから、エネルギー的にはまったく変わらないという。
しかし、情報は違います。上の図はどう見てもバラバラですが、下の図は「SOS」と読める。同じ16本のマッチ棒
だけど、情報では、下のほうには意味があるけれど、上のほうには意味がない、だから違うものなのだと見ます。
情報の見方では、この二つには差があるんです。その差がまさに情報なんだと、そういうようなことが書いてあり
ます。