数学 「人生は数式で考えるとうまくいく」A
                  〜知識×経験=知恵〜
 NO.199 

2006.12.3作成

 今回も、「人生は数式で考えるとうまくいく」(大村あつし著)という本からです。表計算ソフト「エクセル」の解説書

で有名なITライターが書いた本だけに、数式に置き換えて考えるというユニークな内容でおもしろいですね。

その本の中の数式が出てくる部分から、また少し紹介したいと思います。


知識に経験を掛け合わせると知恵になる

 野外に遊びに行く人の必需品はたくさんあります。カメラはその筆頭ですね。しかし、重たい三脚をわざわざ持ち
運ぶ人はあまり見かけません。また、野外で喉を潤すためにペットボトルを持参する人が多いのもよくわかります。
 さて、いま挙げたことは、すべてが「知識」です。「そんなこと知らなかった」という人はいませんね。
 ところが、一見何の変哲もない知識ですが、ある量販店に勤めるその人にとっては、それは価値のある貴重な
知識だったのです。彼は、野外に遊びに行く人は、「カメラをもっている」「三脚はもっていない」「ペットボトルを
もっている」という点に着目しました。そして開発された商品が、ペットボトルの口に取りつけるだけでカメラを固定
できる簡易三脚です。『ボ撮ルンです』と名づけられたその商品は、凄まじい勢いで売れています。
 私たちの知識、それも広く浅くという意味においての知識量が最大化するのは、おそらく大学受験時、もしくは
高校の受験時でしょう。しかし、学校では、すでに実在するものや学術的に証明された法則しか教えてはくれま
せん。実際、「学校で『ボ撮ルンです』について教わりました」という人はいないはずです。その時点では実在して
いなかったからです。
「インターネットで情報を発信している人がいる」ことを知っている。これは知識です。
「インターネットで情報を探している人がいる」ことを知っている。これも知識です。
 それならば、ホームページを検索できる仕組みをつくって、その両方に満足を与えようと考える。これを私たちは
「知識」ではなく「知恵」と呼びます。そして、この知恵から生まれたのが、みなさんご存じのヤフーです。
 こうした成功例は枚挙にいとまがありませんが、1つ、共通してある真理を教えてくれます。それは、知識は
あくまでも知識にすぎないということです。そして、この世界で成功を勝ち取るために必要なのは、「知識」ではなく
「知恵」であるということです。
 知識はあるのに知恵をもたない人は、まるで、野球部で筋力トレーニングばかりして、一度も白球に触ろうと
しない選手のような印象を受けます。もっとも、私は知識の必要性を否定しているわけではありません。ボールを
投げたり打ったりする前に、基礎体力をつけなければならないのもまた事実です。最後に勝敗を決するのは知恵
かもしれませんが、知識がなければ知恵は生まれません。だからこそ、学校教育は必要不可欠な大切なプロセス
であるといえます。
 ただ、ここで考えてください。人間は、遅い人でも30歳、早い人では20歳くらいから記憶力は衰えていきます。
すなわち、歳をとればとるほど、知識の習得がだんだんと困難になっていくのです。
 ところが、神様は、私たち人間に、歳を重ねても衰えない能力を授けてくれました。「知恵」とは、いうなれば、
「知識」と「経験」の掛け算です。つまり、次のようになります。

 知識×経験=知恵

 ですから、人生経験を積めば積むほど、いろいろな知恵がわいてくるのです。
 先の『ボ撮ルンです』やヤフーの成功と比較するのは気恥ずかしいのですが、じつは私も、ライターとして成功
するために、自分なりに知恵を振り絞ってきました。
 寝食忘れて魂を込めた本が売れてほしいと願うのはライター共通の心理です。そこで私は、自著が何冊か出版
された経験を元に、売れた本と売れなかった本の違いを徹底的に分析しました。得られた理由は1つではありま
せんが、売れるための重要なポイントとして、新刊のときにいかに書店での露出を高くするか、これが後々の売り
上げに大きく影響することを確信しました。もっとも、これはある意味、常識で、こうした知識を得るための学習を
怠っていた私が未熟だったにすぎません。しかし、ここから私は知恵を絞りました。
 初版でより多くの部数を印刷しようとすれば、そのリスクを出版社が負うことになります。そこで私が考えたのは、
あえて自分の印税率を下げるように出版社に打診することでした。仮に、10パーセントの印税率を8パーセントに
下げられれば、出版社はその差の2パーセント分のコストを初版の印刷代に充当することができます。
 すなわち、「コストの一部は私が負担しますので、その代わり、初版をより多く印刷してください」というのが私の
交渉術なのです。
 より儲けたいと思うのであれば印税率を上げてもらう。これが定石です。しかし、私は逆に、「印税率を下げて
ください」とお願いするのですから、初めて仕事をごいっしょする担当者は例外なく面食らいます。もっとも、いつ
でもこうした「逆の交渉」をしているわけではありませんが。
 ただ、これが経験から導か出された私なりの知恵なのです。「知恵」というにはずいぶんと幼稚かもしれません
が、私は、この稚拙な知恵が、結果として十冊以上のベストセラーに恵まれた原因の1つであると感じています。
 ライターになって最初の数年は、「どうしたら印税率を上げられるか」を考え、「売れないのは出版社が悪い」と
考えていましたが、このことに気づいてから、私はそんな自分の身勝手さを恥じるとともに、「売るためにリスクを
背負い、また、身を削るのもライターの使命だ」と意識を改めました。
 ですから、本が発売されても私の仕事は終わりません。
「本が発売される頃には次の本の執筆に取りかかっていなければ、ライターとして安定した収入が得られない」
 当初は私もそう考えていましたが、いまの私は、少しでも本を目立つ場所に置いていただくように、約1か月は
書店を駆けずり回ることもあります。その間の執筆はお休みです。
 こうした販促活動も、「売るのは出版社の仕事」という常識とは逆の行動です。しかし、作者自らお願いにあがれ
ば、書店の店員も快く対応してくれる。これも、知識ではなく、経験から学んだ私流の知恵なのです。
 さて、この知恵は、それがわきいずるとき、すなわち、「無」から「有」が生まれるときに突然目の前に形となって
現れるため、瞬間の出来事のように思いがちですが、その背後にあるのは、やはり知恵力をつけるための日々の
地道な努力ではないでしょうか。この努力段階では「無」ですから目には見えない。ただそれだけのことで、知恵は
特殊な素質をもった人のみが発揮できる瞬発力ではなく、誰もが平等にもっている能力だと私は思います。
 さらに一歩進んで、自ら獲得した知恵を知識として脳にインプットし、その知識に再び経験を掛け合わせて知恵を
絞る。こうしたスパイラルが確立されてしまえば、知恵は無尽蔵に出てきます。これが、「天才」と呼ばれる人たちの
頭の中身であるような気がしてなりません。
「学校は過去と知識を教えてくれるが、本当に大切なのは未来と知恵である」
 偉人が残した名言でなくて恐縮ですが、これが私の信念です。


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