卓球 「強いだけじゃ勝てない」
             〜ラグビー・春口監督〜
 NO.151 

2006.1.23作成

 1月21日(土)、朝起きると外は大雪。午前中、部活の練習はしたものの、午後からの指導者講習会は、今年は

見送りました。昨年の様子は、No.127見て下さい。

昨年の指導者講習会ビデオのファイルはこちら (ファイルに保存してから見て下さい)

思いがけなく時間ができたので、関東学院大学ラグビー部・春口監督の「強いだけじゃ勝てない」(光文社新書)

という本を読みました。その中から、参考になった部分を少し紹介したいと思います。


 *「スタンドにいる部員たちを日本一にする」―初優勝

 逸話がある。「涙の雪かき」である。
 決戦前日、東京に大雪が降った。国立競技場は一面、真っ白い雪に覆われた。ラグビー協会から、東京都内の
ホテルにいた春口のもとに”SOS”の電話がかかってきた。「グラウンドの雪かきを学生に手伝ってほしい」。当然
だと思い、引き受けた。
 春口は寮に残る控え部員に「午前集合」を伝えた。
「俺に不平不満を持っている学生もいたと思う。”雪かきに出ろ”って頭ごなしだから、いやいやだよな。最初は
”なんで、俺たちが”なんだ。実は四年生は出ないんじゃないかと心配した」
 杞憂だった。控え部員は国立競技場に飛んでいった。春口は胸を打たれた。長靴もない、手袋もない。部員は
素手でスコップを握り、一輪車を押していた。
「メイジの学生はまだいなかった。足はぐちゃぐちゃだよ。手も足も冷たいだろう。でも汗びっしょりになって、必死で
レギュラーの舞台を準備したんだ」
 特に反発グループのリーダー的存在だった四年生も遮二無二やっている。練習では何度も怒鳴った男だった。
春口はそれがうれしくて仕方なかった。
 雪かきが終わる。緑の芝生が現れた。春口は「ありがとう」と、泥まみれ、汗まみれの控え部員に言おうとした。
そのとき、ずっと二軍以下でくすぶっていた、その問題の四年生がぼそっと漏らした。「俺、初めてチームの役に
立ったよ」と。
「もう、涙が止まらなくて…。最後の試合にも出られなくて、ほんとうは悔しかっただろうにさ。一本目のため、手を
真っ赤にしてさ、一生懸命、雪かきしてくれたんだ」
 試合直前のロッカールーム。春口は雪かきの件を選手に説明した。箕内は叫んだ。
「やるぞ!ゼッタイ、負けられない。俺たちはスタンドにいる部員たちを日本一にするんだ!」

 140人の部員がひとつとなった。
 マリン・ブルーの波が紫紺のジャージィを飲み込んだ。
 …
ノーサイドの鉄笛が鳴る。ついに大学日本一をつかんだ。
 学生たちは人差し指を立て、グラウンドでジャンプした。ウイニングランを終えると、小柄な春口に飛びかかった。
二回、三回と宙に上げ、最後は地面に落とした。手荒な祝福だった。
 箕内は回想する。
「部全体の盛り上がりを初めて感じた試合だった。試合に出られないメンバーが、試合に出るメンバーのために
舞台を作ってやる。それがあったから、初の決勝戦でも全然臆することなく戦えた。今でも、試合に出ないメンバー
がいるからこそ、レギュラーは力を発揮できると思っている。感謝しなくちゃいけない。僕にとっても、カントーに
とっても、あの試合はいい財産になった」

 伝統校の明治を破っての大学日本一である。新興勢力と言われ続けて久しいチームが、何度も跳ね返された
伝統校の壁をぶち破っての全国制覇だった。大学ラグビーの新時代を印象づける瞬間でもあった。
 そのときの感激は春口の胸に今も残る。
「あの勝利は格別だった。大きな目標を達成した。試合をするために、みんなで雪をどけた。自分たちの代表を
走らせてやらなきゃいけないって、チームがひとつになった。真っ白な気持ちで、純粋にラグビーができた。雪かき
がなかったら、メイジには勝てなかったと思う。ワン・フォア・オール、オール・フォア・ワン、まさにその勝利だった」
 目を閉じる。歓喜が蘇る。
「雪かきをした控え部員に涙を流す。”俺たちはスタンドにいる部員たちを日本一とする”って。歴史を変えた
フレーズだよ」
 こつこつとチームの基礎を築き、ついに大学日本一である。春口が48歳、就任24年目のことだった。   


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