| 卓球 「必ず勝つメンタルトレーニング」@ 〜メンタルトレーニング(9)〜 |
NO.169 |
2006.4.29作成
これも高畑好秀さんの本ですが、「人を磨き、力を引き出す 必ず勝つメンタルトレーニング」(高畑好秀著)と
いう本を見つけました。これは、指導者向けの本で、スポーツの世界で選手たちの力を引き出し実績を上げている
「名将」「名コーチ」と呼ばれる人たちの知恵をふんだんに盛り込まれています。
今回は、第1章 上司こ「心構え」次第で部下はグングン伸びる と 第2章 やる気と能力を120%引き出す
「コミュニケーション」術 から、興味のある部分を少し紹介したいと思います。
1−1 優秀な指導者に求められる要件とは何か
チームが勝つために監督が迷ってはならない 【サッカーJリーグ横浜F・マリノス監督 岡田武史】
横浜F・マリノスの監督を務める岡田武史氏はフランスワールドカップでは日本代表チームの監督も務めました
が、その際、最終的にカズ(三浦知良)選手と北澤選手を代表から外したという出来事は、皆さんの記憶に残って
いることと思います。
カズ選手も北澤選手も、プレーもさることながら、日本サッカー界を常にリードしてきた選手であり、当時の代表
チームにおける中心的な存在でもありました。また当然、彼ら自身にも、これまでのサッカー界を支えてきた、
という強い自負心があるはずです。
そんな彼らは、代表から外されたという現実を前に「なぜ自分が」という深い憤りを感じたに違いありません。
代表チームの精神的支柱であった二人が抜けてしまうことで、チームはどうなってしまうのか、うまく機能していく
のかという不安は、彼らはもちろん、ほかの選手たちの心にもあったはずです。そしてなにより岡田氏自身にも
同じ気持ちがあったと推測できます。
この二人の選手を外した結果、試合で大敗でもしようものなら、応援するサポーターや日本のマスコミから非難
を受けるのは必至です。みすみすチームに不利をもたらすような采配をふるった監督として何を言われるかわかり
ません。岡田氏の決断は、心に浮かんだであろうこのような数々のマイナス要素を断ち切ってのものでした。
監督が選手に気を遣い、選手がそれを受けて「監督のために頑張るぞ」ということは、スポ根ドラマではあり得る
かもしれませんが、岡田氏の考え方はこのような効果を期待したものではありません。監督と選手のこのような
関係は確かに両者にとって大きな快感をもたらしてくれる効果があります。
しかしこれは、個々にとってはプラスに働くが、チームとしては必ずしも同様の効果が得られるとは限らないという
のが岡田氏の考え方なのです。
「チームが勝つためには監督として迷わずに選手を代えるぐらいのことはする」と選手たちに知っておいてもらわ
なければ、いつか絶対に選手の不満が噴出し、チームは乱れてしまいます。二人の選手に気を遣って残すこと
は、代表チームにとっても二人の選手にとっても、決してプラスには働かないと考えての決断だったのです。
2−5 自分なりのコミュニケーションスタイルをつくる
長所は練習で伸ばし、短所はコミュニケーションを通じて取り除く 【女子マラソン指導者 小出義雄】
女子マラソンの指導者である小出義雄監督が育てた代表的な選手に有森裕子と高橋尚子選手がいますが、
この二人の性格は180度違います。
有森選手は、幼い頃から人より秀でた才能がなく、劣等感とずっと戦ってきました。マラソンに対しても「面白い」
という感覚をもったことはありませんでしたが、自分の存在確認ができるものとして競技を続けてきました。
一方、高橋選手はまったくの無名選手でしたが、走ることが好きで好きでたまらず、マラソンに苦痛を感じたこと
がありませんでした。このように二人のマラソンに対する考え方は見事に対照をなしています。それに加えて、有森
選手は練習嫌いで、高橋選手は練習好きという一面があります。小出監督は、この相反する性格の二人をともに
五輪メダリストに育て上げました。
自問自答して自分の殻に閉じこもりがちな有森選手に対しては、「マラソンこそ自分を表現できるものであり、
頑張ればみんな認めてくれる」と励まし、練習よりも「こうすれば本番で走れる」というコンディションニング重視の
指導を行ないました。
つまり有森選手に対して、自分の限界を勝手に設定しないように、自己表現できるものこそがマラソンだ、という
その一点だけを強調してコミュニケーションを図りました。
高橋選手は、走ることにかけては人一倍好きでしたが、大レースで勝ったことがなかったため、マラソンに対して
のコンプレックスがありました。そこで小出監督は彼女のコンプレックスを取り除くために、とにかくほめてほめて
ほめまくりました。
「おまえ、強くなるよ」と小出監督に言われても、最初の頃、高橋選手は本気にしていませんでしたが、練習で
少しでもタイムがよくなったときは「ほら、強くなっただろう」と伝え、少しずつその気にさせていくコミュニケーション
方法をとりました。
個々の選手の性格をしっかりと観察して、長所は練習で伸ばし、短所はコミュニケーションを通じて解消していく
のが小出監督流の選手育成法です。そのようにして選手の長所も短所も総合的に伸ばしていけば人は育ちます。
こうした場合も、日ごろから指導する側、される側のコミュニケーションがうまく図れていないと、各人の表面だけ
を見て、それぞれがもつ本当の長所・短所を把握することはできません。指導する側の人間には、それだけ細かく
選手の言動を観察する能力が要求されるということです。