| 卓球 「必ず勝つメンタルトレーニング」A 〜メンタルトレーニング(10)〜 |
NO.170 |
2006.4.30作成
前回の続きで、「人を磨き、力を引き出す 必ず勝つメンタルトレーニング」(高畑好秀著)という本からです。
指導者向けの本で、スポーツの世界で選手たちの力を引き出し実績を上げている人たちの知恵がふんだんに
盛り込まれていて、大変勉強になりました。
今回は、第3章 「ダメな部下」の正しい育て方、伸ばし方 と 第4章 部下を育て自分も活きる「強い組織」の
つくり方 から、興味のある部分を少し紹介したいと思います。
3−6 目標を定めて育てるのが基本中の基本
大きな物を動かそうとするときのことを考えれば、選手に何をさせればいいのかがわかる
【アニマル浜口】
「大きな物を動かそうとするときのことを考えれば、選手に何をさせればいいのかがわかる」と言うのは、アテネ
五輪女子レスリング銅メダリスト浜口京子選手の父である、アニマル浜口氏です。
大きな物―つまり大きな目標に向かうための心構えです。大きな物を動かそうとするときに一番大変なのは
その静止している物を最初に動かそうとするときです。
最初はものすごい労力やエネルギーを消費します。しかし、一度動き始めると少し楽になり、さらに加速すると
もっと楽になります。
目標を達成する際にも同じことが言える、と浜口氏は考えているのです。幼い頃から二人三脚でレスリングを
続けてきた二人です。
当然、京子選手も最初からいまのように強かったわけではありません。泣きながらの練習が続きました。「なんで
レスリングをやっているんだろう?」と、ときとして疑問を感じたこともあります。
父親の偉大さに押しつぶされそうになったときもあります。そんなとき京子選手以上に、浜口氏は労力や
エネルギーを費やしていたのです。
浜口氏は「気合だ!気合だぁ〜!」ですっかり有名になった感がありますが、それは大きな物を最初に動かそう
とするときに必要なものなのです。京子選手に対して常にその言葉をかけて、最初の苦しい時期を二人で乗り
越えてきました。大きな声を出せば力が生まれてきます。その力が初動の原動力となるのです。これは長期の
目標に向かうときだけでなく、その日の試合で掲げた目標に向かうためのものでもあります。
だからこそ浜口氏は試合前に必ず大きな声を出して京子選手の気持ちを大きく揺れ動かします。大きな力で
前面に向いた気持ちは、一回動き始めれば、あとは自分のリズムでぐんぐん前面に向いてきます。
目標を達成するためには何よりもスタートが大切です。この段階でつまづくと押せば押すだけ疲労してしまい、
前に進まなくなります。
4−4 何事もよい習慣を身につけることで人は変わっていく
ミスをした選手に対して「次のチャンス」を習慣づける
【プロ野球千葉ロッテマリーンズ監督 ボビー・バレンタイン】
ミスをした選手に笑顔で「Next Chance.(またチャンスはあるさ)」と語りかけるのは千葉ロッテマリーンズの
ボビー・バレンタイン監督の習慣です。
グラウンドで、いい加減な気持ちでプレーしている選手はいません。それでも時としてミスは起こります。ですが
精一杯プレーしてのミスは仕方がないことです。
前述の「Next Chance.」はミスをした選手がベンチに戻ったとき、自分はどのような態度で選手を迎え入れ
られるのかを自問自答した上で習慣づけた言葉なのです。
ミスをした選手は「ああ、エラーしてしまった」「チャンスだったのに三振してしまった」と気持ちが沈み込みます。
そんな選手が次に思うことは何だろうとバレンタイン氏は考え、おそらく「監督に怒られる」「スタメンを外されて
しまう」とビクビクしているに違いない、と思ったのです。
これまでの日本プロ野球界の監督の元でプレーしてきた選手にはそのような考え方が根強く残っていて、ベンチ
に戻ったら怒鳴られる、冷たい態度を取られる、と心が畏縮する傾向があります。
つまり、試合に勝ちたい、自分なりのプレーをしたい、といった気持ちではなく、監督に怒られないためのプレーを
しなければならない、という意識が習慣化され、グラウンドで選手はいつもビクビクした脅迫観念のような気持ちを
抱えてしまっています。
そんな重い気持ちでベンチに戻ってきた選手に「Next Chance.」という言葉をかけたとき、最初は戸惑う様子
を見せた選手もいました。しかし言葉どおりチャンスを与え続けることで、選手も結果は結果として受け入れられる
ようになっていき、やがて強迫観念ではなく「Next Chance.」が選手の思考の中で浸透し、習慣化されて
いきます。
そして、ミスした選手も落ち込んだり悩むのではなく「よし、次こそこのミスを取り返すためにやってやるぞ」と、
自然と前向きに考えられるようになり、次に勝つために最大限の力を発揮しようと努力するのです。そんな選手
たちは生き生きとグラウンドの上を駆け回ることができます。一人がプラスの習慣を身につけることで、それが
やがてチーム全体の習慣にもなっていくことをバレンタイン監督は身をもって実感しました。