| 卓球 「そのとき選手が変わった!」A 〜落合博満監督〜 |
NO.248 |
2007.10.29作成
前回の続きで、「そのとき選手が変わった!」(児玉光雄著)という本からです。平尾誠二(ラグビー)、岡田武史(サッカー)、ボビー・バレンタイン
(野球)、井村雅代(シンクロ)、落合博満(野球)という5人の監督が取り上げられていて、スポーツ名監督の言葉がたくさん載せられていますが、
今回も野球の監督からで、落合博満監督の言葉を紹介したいと思います。
落合博満 求道のプロフェッショナル
1 バットスイングでも「構えはこうで、フォロースルーはこうだ」といくら言っても、その形が合わない選手もいる。そういう選手には、最終的に
こうなってくれればいいという形を示し、その人に合ったやりやすい方法を探す。方法論は何も1つだけではないのだ。
2 指導者にとっての本当の楽しみは、自分が教えた選手の成長するプロセスを見守ることではないか。毎日近くから観察し、その選手が
「ここから先がわからない」とか「次のステップを教えてほしい」と言ってきたときには、それまで見てきたことを踏まえて的確な指導をしてやる。
これが、心地よい師弟関係を築いてくれるはずだ。
3 チーム全員が集まったところで挨拶をしてくれと言われたが、私の第一声は「こちらからは何も教えません。聞きたいことがあれば来て
ください」だった。相手がなにを望んでいるのかがわからないうちは、こちらも何をしていいのかがわからない。質問されたことに関して、
それなりの方法論を教えることはできても、「これをやりなさい」と、こちらからは言えない。だが、これが教える側にとっても、また教えられる者
にとっても理想に近いコーチングのり方なのではないかと考えている。
4 プロ入り当時は明確な目標をもっていなかった私が、なぜ三冠王を三度も獲得できる打者になれたか。プロ野球とは、志の高くない人間が
運だけでのし上がっていけるほど生やさしい世界ではない。ただ、数字が人間を大きくしていくことはある。数字が悪いと笑われる。数字を
残さなければ評価されない。あとは、野球をやって生活していかなければならないという現実だ。いまよりもよいところに住みたい。贅沢も
したい。それを実現するために、自分に対してどれだけハッパをかけられるかだ。
5 ひとつのことしかできない不器用な人間は、突き詰めて身につけたことを簡単には忘れない。一方、器用な人はどんどん次のステップへ
進んでいくから、身につけたことを忘れてしまう場合もある。だが、たとえ忘れても体が覚えていてくれる。最も厄介なのは、言葉は悪いが、
感覚や時の勢いだけで物事に取り組む人だ。そんな勢いは決して長続きしないことを覚えていてほしい。
6 一軍とファームを行ったりきたりする選手は、なぜ伸び悩んでしまうことが多いのか。それは、1回の失敗を許してもらえないからだろう。
本当にその選手を育てたいと思ったら、「負けるなら負けてもいい。この試合はおまえに任せた」と言ってやるのが大切だ。「ここで負けたら
ファームに落とされてしまう」と切羽詰まった気持ちで投げるのと、「結果を気にせずに、自分の力を精いっぱい出そう」と思って投げるのでは、
おのずと結果も変わってくるはずだ。
7 選手は自分のことさえ考えていればいい。同じように考えれば、監督は勝つことだけを考えればいい。こうした役割がはっきりしていれば、
あとは全員で目標を目指して前進するだけだ。難しいことは何もないだろう。
8 よい指導者になるためには、1つの条件がある。意外に思えるかもしれないが、最初からプラス思考の人間は、決してよい指導者には
なれない。よい指導者と呼ばれる人たちは、はじめにマイナス思考で最悪の結果を想定し、そうならないような計画を立ててから組織や集団を
動かす。そして、全体の流れが軌道に乗ってきたと見るや、プラス思考に転じて攻めていく。
9 一番悪いのは、プロ野球にたとえれば、「この戦力なのだから、うちはAクラス(3位以内)を狙う」などと言う指導者だ。そんな指導者は、
ユニフォームを着る資格などない。ファンやメディアからどんなにバカにされようが、現実的には無理だとわかっていようが、「うちは優勝を
狙います。それだけの戦力はある」と外に対して言えるのが、真の指導者なのだ。
10 王貞治さんを大打者に育てたのは、巨人の打撃コーチだった荒川博さんだと言われているが、ヒントを与えたのは荒川さんでも、それを実行
したのは王さん自身だ。どんなにいいヒントをもらっても、それを実行しなければ成果は上がってこない。ヒントを与えた荒川さんも凄いが、
王さんがそれを自分のものにして、なおかつ荒川さんが教えなかったことまで勉強していったから、868本塁打をはじめ突き抜けた数字を
残せたはずだ。荒川さんが教えたことだけをやっていたら、”世界の王”など生まれていないだろう。
11 コーチから「バットを短くもて」と言われ、何も考えずにバットを短くもってしまうような選手は、ある時期は指導者にとって使いやすい存在だ。
しかし、その指導者がやめて別の人間がきたら、自分にはアピールしていくものが何もないことに気づかされる。そんな選手は、あっという間に
使いづらい存在となり、引退の時期を早めてしまう。だからこそ、指導者は選手から能動性を引き出し、自分の野球に自分自身で責任をもてる
選手に仕向けておくことが肝要だ。そのためには、練習のときから自分で考える習慣を身につけさせたい。
12 野球の指導では、「ボールは両手で捕りなさい」と言われている。では、なぜ両手で捕らなければならないのか。それを「野球の常識だ」という
言葉だけで終わらせるのではなく、理由をきちんと説明して納得させることができれば、どんな選手にも正しくやらせることができる。
13 何でもできる人はいない。私自身も、そんなスーパーマンは、いまだかつて見たことがない。反対に、野球はうまいが新聞もろくに読めない
という人間なら何人も知っている。その人に社会常識だと言って漢字テストの勉強をさせれば、ある程度の能力は身につくかもしれない。だが、
それはその人の本当の意味での能力を生かしているとは言えないだろう。
14 一人の人間としては、自分でやっていこうとする責任感も必要である。だが、上司という立場にいるのなら、任せる部分はきちんと部下に
任せておいて、あとはうまくそれらを昨日させるというやり方をとるべきだ。自分がやろうとしていることを部下に理解させながら、部下のよさを
引き出してやる。そうすれば、部下も思い通りに動いてくれるはずだ。
15 40本塁打してくれる大砲が貴重な戦力なら、送りバントを100パーセント決めてくれる選手も大切な戦力だ。