| 卓球 蔡振華&孔令輝 〜「卓球レポート」より〜 |
NO.35 |
99.7.19作成
現在、世界の卓球界をリードする二人が来日。
世界一を育てた男と、世界一に登り詰めた男。
卓球レポートに特集があったので紹介します。
「技術の先見性と若手の育成が復活への道」
◆わずか数年でどのようにチームを立て直したのですか。―
蔡振華
「そのとき主力だった選手たちは完全に自信を失っていました。だから、私はまず、選手が失った自信をどうやって取り戻すかということを考えました。そして、選手の練習方法をしっかり管理し、強化することから始めました。
選手にはスタイルによって個別の練習方法を与え、選手の特長を引き出すことを一番大事にしました。中でも、サービスから3球目までの展開に着目し、3球目に攻撃できない場合にどうやって相手にチャンスを与えずに自分が攻撃を仕掛けていくかということを選手とともに考えました。
また、守備に対する意識改革も大切なことでした。監督になった当時、選手達は『ブロック』を単なる守りだと考えていました。しかし、ブロックにも攻撃的な守りがあります。自分のブロック次第で相手に致命的なダメージを与えることができるということを言い聞かせ、攻撃的なブロックの練習を取り入れるようにしました。
一方で、若手の育成は欠かせない、大事な仕事でした。古い練習方法で育ってきたベテラン選手たちの技術を改革するのは困難なことです。そこで、将来のことを考え、思い切って若手を起用し、育てるようにしました。若い選手たちのために新しい練習方法を考え、新しい中国チームを築くことが中国卓球再建への道だと考えたのです」
◆監督に就任して以来、90年代の技術的な流れはどのようになっていますか。―
蔡振華
「ここ10年ぐらい、各国の選手はより攻撃的なプレーになってきました。選手たちはスピードやスピン、パワーを追求し、それと同時に用具も目覚ましく発展しています。
その攻撃的なプレーの中で主導権を握るには、早くチャンスをつくり、強く打っていくことが必要です。だから、選手たちはスピードやパワーにこだわってきました。
一方で、各選手の攻撃力が高まるほど、ブロック力も高くなりました。最近では、相手の強い攻撃に対するブロックの確率が非常に高くなっています。
また、相手に先制攻撃をされないように、サービスやレシーブ、台上処理などの細かな技術もかなり高いレベルになりました。
このような技術の流れの中から、最近はまた新しい変化が見られます。それは、相手の攻撃をブロックし、相手の弱点を突いて得点する
という展開が多く見られるようになったことです。
これまでは3球目で強く打つことや、ネット際のボールを攻撃することに重点が置かれていました。
しかし、最近は攻撃されたときに確実に相手の弱点を突けるようなブロックが重要なのです。
これは、91年に私が監督になったときから選手にアドバイスしていたことです」
◆では、こらから卓球の技術はどのような方向へ進んでいくと考えられますか。―
蔡振華
「これからの技術的な流れを予測すると、恐らくスピード・スピン・パワーに加え、相手の弱点を突く、または相手が打てないところに打つという技術がもっと進歩してくると思います。
また、さらに速さが重要になってくるでしょう。この速さとは、ボールのスピードや打球タイミングではなく、戦術を変化させる速さということです。
試合の中で、相手が追いつけないほど速く戦術を切り替え、その戦術の変化によって相手を倒していくというプレーが増えてくるでしょう。
だから、これから世界で戦うためには、相手の戦術に速く対応できる能力と、相手を上回る戦術の幅が必要になるでしょう」
中国がどん底に落ちた時代に監督となり、重くのしかかるプレッシャーの中で彼が真っ先に取り組んだ仕事、それは時代の先端を行くプレーを考えることと、才能ある若い選手たちに多くの経験を積ませることだった。そして彼は、若い力に秘められた未知の可能性を余すところなく引き出し、わずか数年で今日の中国卓球の隆盛を築いたのである。
◆日本チームの印象について聞かせてください。―
蔡振華
「選手について感じるのは、競争意識が低いということと、技術的なバランスが悪いということです。
日本の指導者はよく『選手の個性や特長を伸ばすことが大事』と言います。確かに日本の選手は特長があります。が、特長を生かす前に、しっかり基本を身につけることが大切です。基本を学ばずに特長ばかりを重視してしまうと、たくさん隙がある選手になってしまいます。そうすれば、結局勝てなくなるのです。
まずは基本力を高め、いろいろなボールに対して死角がないようにしなければなりません。それから選手の個性や特長を伸ばしていく、それが選手を育成するための順番ではないでしょうか」
俗に、『名プレーヤー、名監督にあらず』という。しかし彼は、選手としても監督としても、大きな成功を収めた。
指導者として大切なことは何か。世界のトップに立つ選手たちが彼の言葉に耳を傾けるときのしぐさと瞳の輝き、そして時折見せる彼の笑顔と選手を見つめるまなざしから、その答えが見えてくる。
「頭を使って、努力するのが当たり前」
◆世界で勝つためには、常に新しい技術を取り入れることが大切だと思いますが、技術的に進歩していることは何ですか。―
孔令輝
「今までは相手に打たせて自分の得意なラリー展開にするというパターンが多かったんですが、最近は3球目攻撃に力を入れて、さらに強化しているところです。
スピードを速く、スピンを強くして一つでも多くチャンスをつかみ、積極的に攻撃をした方が有利になるのではないかと考えています」
◆孔令輝選手のプレーを見ると、まず頭脳的だと感じます。そしてツッツキが多彩で、バックハンドの安定性も抜群ですね。―
孔令輝
「世界のトップに上がってくる選手は、みんな自分と同じぐらいの技術をマスターしています。また、頭を使って試合をするのも当然のこと。そうしなければ、自分が描いている戦術ができませんから。
ツッツキやバックハンドにしても、他の中国選手はみんな上手です。練習で、レシーブや3球目までの展開をすごく大事にして、毎日一生懸命練習していますから…。自分だけ特別うまいということはないと思います」
◆中国卓球の原点『弧線理論』
まず弧線という言葉を認識し、理解してもらいたい。弧線とは中国卓球における原点であり、すべての打球は弧線により成り立っているのである。
卓球は台の中央にネットがあり、そのネットを越えて相手コートにボールをバウンドさせるスポーツだ。そうなると、打球したボールの軌跡は必ず弓形を描きながら飛んでいることになる。ボールの軌跡が弓形を描くためには、フォームにも弓形(弧線)の部分があることが自然だ。
ボールの真後ろにラケットを垂直に立て、ドライブをかけずに真っすぐに打球した場合、ボールが飛ぶ軌跡は弓形ではなく直線になり、オーバーミスをしやすくなる。また、そのフォームで下回転のボールを打球すると、回転に影響されてボールは下に落ちてしまう。
ボールの3時の位置にラケットを立てて当てると、真っすぐな打球になり、弧線を描けない。弧線を描くためにはどうすればよいのかというと、ラケット角度を少し前傾させ(かぶせ)て、2時から2時半の位置に当てて少し前進回転をかけるようにしなければならない。
弧線を描くために一番大切なことは手首の使い方である。ラケットを握ったときに手首を少し内側に締めるようにすれば、前腕を曲げるだけで自然に弧線が描けるフォームになる。
フォアハンドもバックハンドも弧線を描いて打球する。「ショートはどうするのか?」という疑問を持つかもしれないが、無論ショートも弧線を描いている。真っすぐ後ろに引いて前に出すのではなく、手首を使って微妙に上に持っていきながら押して小さい弧線を描いている。ツッツキも同様に真っすぐではなく、スイングをスタートする時点からインパクトするまでにも、小さく弧線を描いたフォームになる。ただし、ドライブやショートの弧線とは逆の動きの弧線になる。
どんな打法においても、弧線がなく、直線的なフォームになると硬さが出て、滑らかさがなくなってしまう。弧線はフォームの柔らかさを保つための方法でもある。なぜ柔らかさが必要かというと、次の戻りに影響してくるからである。カチカチのフォームでは戻りが遅くなり、ボールに対する順応性も悪くなってしまうのである。