卓球 「卓球戦術ノート」(1) 
         〜戦術の勉強〜
 NO.75 

2002.12.4作成

 前号でも紹介した、卓球王国ブックスから出ている「卓球戦術ノート」(高島規郎著)という本ですが、なかなか

読んでいてためになります。これからは、戦術の勉強もしなければいけないと思っていたところなので、

ちょうど戦術について勉強するテキストとして適当だと思いました。

 今回は、この本の 第1章 「戦術」とは何か から、ためになった部分をまとめておきたいと思います。


1.「技の戦術」と「心の戦術」を知る

 ・気持ちと技術を切り離し、試合を組み立てることが大切だ

   戦術というのは、単に「技術を用いた作戦」と思いがちだが、実は「心」、「気持ち」と密接にかかわっている。
  卓球の戦術を組み立てる時には、試合で使う技術と、精神面の両方を考えることが重要だ。
   技術と気持ちが切り離されていれば、失敗してもばん回できる。「勝利するまでの失敗はしても構わない
  んだ」と考えることもできるはずだ。 

 ・本人が感じる長所・短所と、第三者の見方というのは、食い違うことがある

   相手のプレースタイルを見て、作戦を立てることも大切だが、自分の卓球を理解することは、それ以上に重要
  なことだ。

 (ケーススタディ)98年アジア選手権で、「技の戦術」と「心の戦術」を学んだ武田・川越組

   「気持ちを高めていけば、自分でも予期しないことが起きる」ということを、彼女たちは学んだ。「技の戦術」と、
  「心の戦術」というものを自分でコントロールできれば、日本選手でも世界で勝てるということを、武田・川越の
  ダブルスは、このアジア選手権で証明した。

2.「先手」と「後の先」の戦術

 ・「先手」の戦術と、「後の先」の戦術の基本的な考え方

   囲碁において「先手」というのは、「相手に受けを強要する手」、すなわち、相手がそれに応じた打ち方を
  しないと、大きな損害を被る恐れのある一手のことである。
   これに対して「後の先」とは、相手の攻めを受けたあとに攻め返す。大局的に見ると、最終的には先手を
  打った時よりも大きな効果が期待できる一手のことである。一般的に、後者のほうが相手に与える精神的
  ダメージは大きいと言われている。

 (ケーススタディ)世界を制した河野満選手に学ぶ、経験と分析に基づいた先手・後の先の戦術

   77年のバーミンガムで行われた世界選手権で、河野満選手は相手に攻めさせてからの反撃を多用して優勝
  した。これは見事な「後の先」の戦術だった。速攻選手と言えば、前で打って打って打ちまくるというイメージが
  どうしても強いものだが、世界チャンピオンになった時の河野選手のプレーというのは、オーソドックスであり
  ながら、守りもあれば速攻もあり、カウンターもあれば逆モーションもあり、戦術変更も頻繁に行っていた。

 ・シビアなゲーム性に耐え得る技術・メンタルを、ふだんの練習で培おう

   シビアなゲーム性の中で、いかに自分の経験を生かし、いかに自分の戦型を理解し、いかに相手の情報を
  分析して試合に臨むことができるかということが試されるのだから、卓球の場合には、他のスポーツよりも
  心理的な要素が大きく作用する。つまり卓球は、技術よりもむしろメンタルのコントロールが非常に難しい競技
  なのだ。
   また卓球では、自分のプレーをいろいろな相手の戦型に対応させて、作戦変更を瞬時に行う必要がある。

 (ケーススタディ)試合全体を大局的にとらえ、相手の作戦を完璧に読み切るワルドナーの戦術

   この試合を分析して言えることは、ワルドナーは自分の形を絶対に崩さないということだ。その形が1、2
  ゲームでうまくいかなくても、3ゲーム目に自分の形に持ち込むことができれば、残りのゲームは自分のペース
  で完全に試合の主導権を握れることを知っている。相手の作戦・戦術をまず読みとりながら、先手攻撃を
  仕掛けたり(先手)、後手に回りながらチャンスが来るのを待ったりという作戦(後の先)を、思い切って実行に
  移せるのだ。

3.技術だけでない「速攻戦術」とは何か

 ・技だけの速攻でなく、メンタルの部分での「心の速攻」を大切にしよう

   心理的に「常に早く攻めよう」「相手の作戦を読んで逆を突いて攻めよう」という積極的な気持ちが、プレーの
  中に速攻として現れてくることが大切なのだ。消極的な卓球の中で、怖いから早く打つというのは「速攻」では
  ない。これは確率の低い一発勝負であったり、無茶苦茶な速攻になってしまう。
   だからこそ、「技の速攻」だけでなく、「心(メンタル)の速攻」を忘れてはいけない。ただピッチを早くして球を
  打つことだけが速攻ではないのだ。

 ・ポイント間のインターバルを短くしていく速攻戦術

   試合中の作戦を考える時、また戦術を変換する時、次のサービスやレシーブを考える時に、相手に考える
  余裕を与えないテンポの早さも速攻のひとつと言えるだろう。

 ・相手よりも早くサービス、レシーブの構えに入ることを心がける

   つまり、「速攻戦術」とは、連続攻撃したり、早い打球点で打ったり、スピードあふれるボールを打つことだけ
  ではない。心理的な駆け引きを含め、ボールを打っていない時間さえも考えていくことが大切なのだ。そして、
  「常に相手に立ち向かう積極的な気持ちを持つ」ことが速攻戦術の考え方の柱になっている。

4.試合での「2本」を身につけるための練習

 ・練習での1本のミスが試合では3本のミスになり、エースボールは試合で3割減になる

   試合の時に打って入らないのは別に悪いことではない。1ゲーム目に自分のボールが入らなかったら、そこで
  ショックを受けて落ち込むのではなくて、どうしたら2ゲーム目にボールが入るようになり、得点できるかを
  考える。そういう思考がなければ、調子が良ければ勝つけれど、調子が悪ければ負けるという単純な選手に
  なる。

 ・2本のファインプレーが試合の流れを決め、勝利を引き寄せる

   実戦ではファインプレーが試合の流れを決めることがある。競った時のファインプレーが相手に心理的な
  ダメージを与え、自分の勢いを加速させる。特に実力が互角の相手との試合では、ファインプレーが勝敗を
  決めると言っても過言ではない。

 ・「安全な卓球」では試合に勝てない。ミスを恐れない想像力のあるプレーを練習しよう

   あなたのふだんの練習は、「2本のファインプレー」を生むためのものだろうか。それとも、安全で気持ち良い
  だけのものだろうか。そのふたつの練習の間には、実は「勝者」と「敗者」の境界線が引かれているのだ。

5.効いているサービスは徹底的に使え

 ・現代卓球は先行逃げ切り型。得点できる技術をぶつけてスタートダッシュをかける

   現代卓球では「先行逃げ切り型」が主流になり、11点制になってからはこの戦い方でないと試合では
  勝てない。特に、サービスは攻撃の第一球で、効いているサービスを前半からどんどん出していってスタート
  ダッシュをかける戦術が、実戦では有効だ。

 ・欠点の指摘は得点に結びつきにくい。長所を伸ばせば得点しやすくなる

   実際は、効いているサービスを使ったり、自分の長所を実戦で使い続けていく習慣をつけることが、長所を
  されに伸ばすことにつながっていく。 

 (ケーススタディ)アトランタ五輪で、徹底した「バックへのショートサービスからの展開」戦術を用いて、孔令輝を
           破った金擇洙

   世界のトップレベル同士の対戦でも、強い相手に勝とうと思ったら、サービスや戦術を徹底することがいかに
  重要であるかを示す一例である。世界のトップレベルになれば、弱点などはごく小さなものだ。逆に言えば、
  弱点が小さいから世界のトップクラスまでいける。しかし、どんな選手でも完璧な人はいないから、その小さな
  弱点を崩していかないと勝機はない。

6.試合で勝つためのレシーブ戦術

 ・レシーブ攻撃、相手に攻撃させないレシーブ、絶対にミスしないレシーブの3本立てのレシーブ戦術

   ”レシーブを全部取ろう”などと思ってはいけない。”4割取れればパーフェクトだ”と思えばいい。しかし、
  その時に6割取った、8割取ったとなれば、それはプラスαのポイントになる。そうなれば、試合がもつれて
  いっても、最終的には大接戦で勝つことができる。
   レシーブというのは大胆な部分と慎重な部分が交錯するものである。言い換えれば、より心理的な面が
  影響する技術なのだ。

 ・サービス、レシーブの変わり目がとても重要になる

   レシーブで連続失点した時やサービスの時に1本も取れない時に、心を動揺させないことも大事だ。
   レシーブ―それはプレーヤーの心の強さが試される時かもしれない。   

7.失点する時は1本でも多くラリーをつなぐ

 ・簡単に失点しないことで、相手にプレッシャーをかけていく

   得点する時には早く点を取り、失点する時には1本でも多くラリーをつなげていく戦い方は、ドライブ型でも、
  カット型でも、速攻型でも共通している。相手は先手を取って自分が攻め込んでいるのになかなか点を取ること
  ができず、心理的に苦しくなってくる。加えて、「点を取るのが難しい」というイメージを相手に与えることになり、
  その後の試合展開を有利に進めていくことができる。

 ・粘ることによって劣勢のラリーを逆転することができる

   自分が攻め込まれていても、いつ自分にチャンスが回ってくるかはわからないものだ。ラリーの最後の最後、
  決着がつくまであきらめないことで自分の精神力もアップするし、集中力もアップすると同時に、相手に大きな
  プレッシャーをかけていくこともできる。そういうことを積み重ねていくと、劣勢のラリーから逆転することも
  できる。ラリーの途中で”もうこれはダメだ”とあきらめる人にチャンスは来ない。

 ・得点を狙う時には「必勝の戦術」で速攻を仕掛ける

   得点を狙う時には「必勝の戦術」を使い、ファーストチャンスをとらえる。そして、その一打で相手をしとめる
  気概を見せる。そして、失点しそうな時には「不敗の戦術」で相手の攻撃を守り切り、1本でも多く返す。劣勢の
  時でもあきらめずに粘り、そこからチャンスが見えたら逆襲に転じる。そういう戦い方をしていると、ボールへの
  集中力は高まり、相手にジワジワとプレッシャーがかかり、逆転勝ちが多くなっていく。

8.ゲームを捨てる戦術

 ・次のゲームに勝つための「捨て方」。大量リードを奪われてから相手にプレッシャーをかける

   リードされてゲームを「捨てる」時でも、自分がリードしているというリズムで戦う。そういう戦い方をすることで、
  自分の戦うタイミング、本来のリズムをそこでつかむことができるし、相手に対してもプレッシャーがかかる。
  ただ単にゲームを落とすのではなくて、次のゲームを確実に勝つために「捨てる」という負け方が大事なので
  ある。

 (ケーススタディ)相手の情報を全部引き出すためにゲームを捨てて、ラリー戦に持ち込み、相手ボールに慣れる

   力が拮抗していたらストレートで勝てるということはないし、「必ずゲームオールのジュースで勝つ」という
  戦い方をしなくてはならない。同じレベルの選手同士であれば、1ゲーム目を取っても2ゲーム目を取られること
  が多いから、そこでのゲームの負け方、捨て方が重要になる。

 (ケーススタディ)ラッキーポイントを取った次のボールはハイリスクでも狙っていく。失点しても五分五分だから

   ラッキーポイントを取っているから、次のボールでハイリスクなことをして、たとえミスしてもそこで五分五分に
  なる。そういう極端な戦法を使ってきた。
   しのいでしのいで得点をした時の次のボールを、レシーブからスマッシュしたりしていた。

 (ケーススタディ)「このゲームは負けた」という時点から次のゲームをどう戦おうかということを整理していく

   ゲームポイントを取られて、”もうこれで負けた”と思った時でも、”もう1本取ってみよう。そこで1本取れたら
  もう1本取ってみよう”という気持ちが相手にプレッシャーを与える。相手にそこで余分な球を打たせることが
  必要なのだ。ところが簡単に相手に1本与えて、次のゲームに入れば、相手は調子の良いまま戦うので不利に
  なる。

9.戦術は得意技と弱点のつぶし合い

 ・自分の弱点を隠しながら、長所を生かす戦い方

   卓球のゲームは、お互いの得意技術と弱点を分析しながらの駆け引きがあり、そのやり方によっては格下が
  格上に勝つことも可能である。格下の選手が格上の選手に勝つやり方というのは、自分の弱点を隠しながら、
  長所を生かす戦い方であり、相手の弱点をつくという戦術である。 

 ・自分の打球コースと得意な技をセットにして、相手の技や打球コースを限定していく

   最終的には自分の打球コースと得意な技をセットにして、相手の技や打球コースを限定していく。相手は
  それに気づいて無理をしてコースを変えようとしてくる。つまり、そこで勝負をかけてくる。勝負というのはリスク
  がつき物で、ミスも出る。相手にリスクを負わせる。これもひとつの狙いと言えるだろう。そういう戦い方が自分
  の長所を生かし、弱点を補って、最終的に自分の得意なコースに打たせることにつながっていくのだ。

 ・相手の弱いところを徹底的につぶすやり方もあれば、相手の得意技をつぶしていく方法もある

   卓球の戦術は、このようにお互いの長所・短所の駆け引きや、相手によってすべて違う組み立てがあり、
  試合の1本ごとでめまぐるしく変わっていくものだ。
   故・荻村伊知朗氏は、卓球を「100m競争をしながらチェスをするようなスポーツ」と表現した。体力的にも
  ハードでありながら、その中に知的な要素をふんだんに含んでいる。これこそが卓球の奥深い、そして
  おもしろい部分なのだろう。


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