| 卓球 変わろうとする才能 〜「卓球レポート」より〜 |
NO.96 |
2003.12.24作成
No.93で、全日本選手権の予想クイズに応募してみましたが、予想A 遊澤&倉嶋、予想B 松下&遊澤
ともに外れ、偉関が優勝しました。遊澤は準々決勝で新井に、倉嶋は準々決勝、松下は準決勝で偉関に破れ、
決勝は偉関&新井の組み合わせになったようです。なかなか当たらないものですね。ところで、この新井周選手
は、千木良TPCの新井さんの所のおむこさんだそうで、これから応援していきたいと思います。
女子の方は、18歳の平野選手が初優勝。「卓球レポート」3月号に、そのインタビューが載っていたので、
感心した部分を紹介したいと思います。
変わろうとする才能。 平野早矢香(ミキハウス)
準決勝、対梅村戦。打ち抜かれることは覚悟していました
―梅村選手との対戦は、どのような心構えで臨みましたか。
平野 冷静に考えれば、自分の今の技術レベルで勝つのは難しい。「攻撃的な部分としっかりつなぐ部分を、
試合の流れの中できちんと使い分けよう。結果はその後でついてくる」、そう思って試合に臨みました。
―1、2ゲームを7本、6本と簡単に落としてしまいましたね。
平野 実際、1、2ゲーム目は打ち抜かれることが多かったですが、予想通りだと割り切ることができました。
それよりも、自分のボールでは簡単に打ち抜くことができないので、とにかくしっかり食らいついていくことに
集中しました。
―梅村選手の猛攻をしのぎ、勝負は最終ゲームまでもつれました。
平野 途中から自分のリズムになり、梅村さんに打ちミスが出てきました。そのときに特に変わったことはせず、
この流れのまま冷静にプレーしようと考えていました。
―相手の動きが見えてきた?
平野 はっきり覚えているわけではないのですが、梅村さんが決めにこようとしているのが感じ取れたのです。
守るときも、「自分が押しているぞ」というのを相手に見せながら守っていました。
決勝、対藤井戦。逃げるなと、逃げるなと言い聞かせていました
―全日本の決勝というのは特別な舞台だと思います。その決勝に臨む気持ちはどうでしたか。
平野 「決勝ということを自分の中で意識せず、楽しみながら思い切りプレーしたい」という気持ちだったのです
けど…。やはり難しかったです。
―梅村戦と同様、1、2ゲーム目を落としてしまいました。
平野 私としては自分の思い通りのプレーができていたと思うのですが、それ以上に藤井さんのプレーが良かった
ですね。スタートは硬くなりましたが、とにかく自分に流れが来るまで「我慢、我慢」と思っていました。
―3ゲーム目を取ったものの、4ゲーム目を取られてゲームカウント1−3。後がない状況でした。
平野 後がない状況になったのが、逆に良かったと思います。1−3という状況になって、いい意味で開き直ること
ができました。
―5ゲーム目は取ったものの、6ゲーム目は8対10とマッチポイントを握られてしまいました。そのときの心境は
平野 あの場面は、意外と冷静だったんです。「やられたー」と落ち込むことはありませんでした。
―何とかマッチポイントを切り抜け、フルゲームになりました。2対5とリードされてのチェンジエンドでしたね。
平野 最終ゲームでは、自分に流れが傾きつつあると感じていたのですが、相手もついてきている状態。ここでは
「自分に流れがきてほしい!」と焦りました。
―1点返して3対5。そこからロングサービスを2本続けて出しましたね。これは戦術的に意識したのですか。
平野 試合には「流れ」があると思います。相手に流れがある時にそのまま流れに運ばれてしまい、気がつけば
試合が終わってしまうということもあります。けれど、自分の流れのときに、その流れに逆らわないでプレー
するということもあるのかな。それでロングサービスを自然と出せたのではないでしょうか。
―マッチポイントを握り、バック対バックのラリーで最終ポイントを制した瞬間、どんな気持ちでしたか。
平野 ほっとしました。気を張り詰めていたので、それが落ち着いたというか…力が抜けました。
―勝因は何でしょう?
平野 苦しい場面って、卓球だけに限りませんよね。これからの人生、卓球に限らずいろいろな場面で苦しい局面
がやってくると思うんです。そのときに、自分から向かっていく、もしくは逃げないで受け止めるということが
大切だと思います。逃げずに自分のすべきことを最後までやり遂げれば、結果が成功でも失敗でも、自分
のレベルアップにつながるはず。ですから、0−2や1−3の場面も、「ここで自分から逃げたら、この先何回
も同じことの繰り返しになる。それじゃ卓球も人間の中身も絶対に進歩しない。逃げるな、逃げるな」と自分
に言い聞かせていました。その気持ちが勝利に結びついたのだと思います。
次の目標。世界でメダルを狙える選手になることです
―目標だった全日本選手権大会優勝を手にした今、次の目標を見つけるのは難しくありませんか。
平野 目標は、はっきりしています。世界の舞台でメダルを狙える選手になることです。
―世界でメダルを取るために必要なことは何でしょうか。
平野 技術的にももちろんですが、精神的、人間的にももっと強くならなければならない、変わらなければならない
と思っています。特に昨年、高校生から社会人になってその必要性を痛感しました。
―どのようなことを感じたのですか。
平野 中学・高校時代は誰かが引いてくれたレールの上を歩かせてもらうという、受け身の部分がありました。
しかし、社会人になり、自分自身でレールを引くということを考えるようになりました。もちろん周囲の方々が
私を支えてくださいますが、もう社会人ですから、最終的には「自分自身」というものが必要です。中学・高校
時代はそうしたことに気づいていなかったので、社会人になってみて、「私は自分が思っているよりも、自分
1人で行動できないんだな」と痛感しました。まだまだ未熟な部分は多いです。
―社会人になって、技術的に変わった部分はありますか。
平野 最近ではいろいろな人に話を聞いたり教わったりして、少しずついろいろなサービスを使って試合を組み
立てられるようになりました。それから、今回の試合でいろいろな方から「フォアハンドが良くなった」と
言われました。
―世界を見据えたとき、技術的な部分はどう考えていますか。
平野 今回優勝したとはいえ、自分のプレーは未熟な部分がたくさんあります。技術的な改善も大切ですが、今
自分に必要なのは、体をうまく使ってボールに力を伝える…そうした運動の理論を突き詰めていくことが
重要だと考えています。
―全体的なレベルとは。
平野 人間的な成長も含めて、全体的にということです。私は、卓球の技術が進歩するということも、人間的に
成長するということも、何かしらつながりがあると思っているんです。だがら、最近は何事に対しても軽く受け
止めないようにしています。かといって、重く受け止めるというわけではないのですが(笑)。真剣に受け止め
るというか、前向きに受け止めるといえばいいでしょうか。そうやって何事も真摯に受け止めることで、自分
が成長するためのいろいろな要素を見逃さないようにしています。
―目標にする選手はいますか。
平野 卓球選手ではありませんが、マラソンの高橋尚子さん。自然体で、ひたむきに物事に向き合える高橋さんは
本当にすごいと思います。
―卓球選手で、技術面などで参考にする選手はいますか。
平野 中国選手の技術はすごいので参考にしていますが、今のところ特別にこの人の卓球というのはありません。
いろいろな選手のプレーは見ますが、結局のところ、自分自身で変わっていかなければいけないと思って
います。
―最後に今後の抱負を聞かせてください。
平野 今回の優勝はいろいろな苦しい局面を乗り越えることができたので、とても自信になりました。この優勝を
足掛かりに大きな目標に向けて、さらにステップアップしていきたいと思います。
ミキハウスの監督は、「平野には素晴らしい才能がある。それは、自分が変わろうとすることであり、それが
できることだ」と語っている。このインタビューを読んで、優勝する人は心の姿勢も一流なんだとうれしく思いました。