将棋 「振り飛車ワールド」第五巻@ 
              〜さばきへのこだわり〜 
 NO.1081 

2003.12.14作成

 今回は、「振り飛車ワールド」第五巻からです。第1章に、久保利明八段のインタビュー「さばきへのこだわり」

あったので、参考になった部分を一部紹介したいと思います。くわしくは本を読んでみて下さい。


◇美濃囲いの堅さに目覚めて◇

― 転向したのはどういう理由からですか?

久保 「奨励会入ってすぐのころですね。そのころ振り飛車に対して玉頭位取りが好きでよくやってたんですけど、
  すごい勢いで潰されちゃって。『ああ美濃囲いって堅いんだなあ』って感じたんです。それが転機といえば転機
  ですね。あとは奨励会だと香落ちやる場合振り飛車が有効ですから、それならいっそのこと振り飛車にしよう
  かなと思ったのもあります」

◇穴熊に組ませたくない◇

― 振り飛車を覚えた当時はどこに飛車を振ってたんですか。

久保 「はじめは三間飛車ばかりやっていました。香落ちの場合三間飛車が多いっていう理由もあったんです
  けれど、当時は今に比べて穴熊が少なかったから、三間飛車が一番さばきやすいというか、さばいた時が
  気持ちよく感じたんです」

― 三間飛車が一番気持ちいいというのは?

久保 「さばけた後に残る形です。飛車と角と桂と左辺の駒がきれいに無くなる。左の香車が取られても、桂馬が
  さばけていれば相当戦えるんですよ。三間飛車の場合、▲5七銀型にしてたんで、さばけると見事に左に何も
  無くなって、振り飛車としては理想的な展開なんです」

― 四間飛車に入ったのは、穴熊対策からだったんですね。

久保 「そうですね。そのころから穴熊に組ませたくないっていう発想があったんですね。今の藤井システムみたい
  な指し方、端突いて早めに桂跳ねてっていうのは昔からやっていました。ただ▲4八玉型だから今の藤井
  システムとはまた違いましたが」

◇すぐ飛車を切りたくなっちゃう(笑)◇

― 作戦負けしないというのは具体的に言うと。

久保 「とりあえずは穴熊に組ませないということですね。あとは駒の効率を相手より良くすることを心掛ける」

― 美濃囲いが飛車に強いというのもありますか。

久保 「それもあるでしょうね。銀冠だと飛車を渡しづらいんですが、僕はあまりやりません。美濃のまま飛車
  切ってしまいます」

― 終盤戦で気をつけていることはありますか。

久保 「意識しているのは、勝ち将棋の場合ここで決め手があるっていう局面が必ずあると思うんですよ。それを
  逃さないのを常々心掛けています。負け将棋の場合は、粘ります(笑)」

◇底歩の利かない将棋は好きじゃない◇

― 早く攻めたくなる?

久保 「攻めたくなるんですね。美濃囲い好きなんですよ。銀冠はどうも下がスースーしていて、好きじゃない。
  飛車を渡すと受けがなくなっちゃうから。僕、底歩の利かない将棋は好きじゃないんです」

◇システムには受けの力が必要◇

― なるほど。藤井システムというと、先攻するので攻撃的なイメージがあったんですが、攻める戦法じゃない
  んですね。

久保 「もちろん攻めるんですが、攻めた後の反動がキツいんですね。だから受けに力がなきゃいけない」

◇現代将棋は玉の堅さ◇

― そんなに堅さが違いますか。

久保 「堅さが違うし、遠さですよね。7筋と8筋。その一路が終盤ですごい差になってくるんです。
   僕自身も急戦はあまりいい戦法じゃないんじゃないかって気がします。▲5七銀左の急戦は本当に見なく
  なりましたよね。たまに▲5七銀右はありますけれど。現代将棋は、玉が堅いのが有利っていうのが主流の
  考え方になってきてると思います。だから7九の銀は基本的に守り駒として考えられているでしょうね」

◇金無双、矢倉、穴熊の三すくみ◇

― 確かに不思議な形ですよね。壁銀じゃないかなって思うことがあります。相振り飛車をあまり指さないので
  利点がよくわかってないんですが…

久保 「利点ないと思ってますよ(笑)。別に金無双に恨みはないんですが(笑)」

― なるほど。手数が掛からないっていう利点があるんですね。

久保 「ええそうです。穴熊と矢倉と金無双と三つあるとすると、金無双は穴熊に強いんですよ。でも矢倉に弱い。
  穴熊は、矢倉に強いんだけど金無双に弱い。矢倉は金無双に強いけれど穴熊に弱い。三すくみなんです(笑)」

◇定跡を覚えるのが大事◇

― では振り飛車党に限らず、アマチュアの人が強くなるために、お勧めの勉強法を聞かせていただきたいと
  思います。

久保 「絶対自分よりうまい人と指すべきですよね。ゴルフでもそうなんですけれど、同じ組に自分より強い人が
  居ないっていうのは、スコアがなかなか伸びないんです。うまい人が居るとその人を見て伸びていくっていう
  のがあると思います。やっぱり自分より上が居ることを知らないと。お山の大将じゃダメですよね。
   あとは得意戦法を見つけることですね。それについて追求した方が上達が早いと思ってます」

― 定跡は大事なんですね。

久保 「やっぱり基本じゃないですか。基本を知らないのに、その先はないと思ってます。基本を知ってこそ、次が
  生まれる。そういう意味で定跡が必要なんじゃないでしょうか」

― 棋譜を並べていろんな将棋に触れるのもいい勉強になりますか。

久保 「いいですね。やるべきです。
   僕の場合大体勝った方から見て並べるんです。そこでも負けたくないんで(笑)。それで先手から見て並べる
  のであれば、後手の手を隠す。先手の手を指した後、後手はどう指したのかなあって自分なりに考えて、
  それから次の手を見る。違っていたら、またその手について考える。そんな感じで並べてます」

◇頭の中に盤面を作る◇

― 詰将棋はどうですか。

久保 「詰将棋は、一回図面を頭にインプットして、頭の中で考えるようにしています」

― それはなぜですか。

久保 「対局中は何手も先を考えなきゃいけない。そういうことに役立つと思ってるんです。盤を見ながらやって
  いると頭の中に盤が作れなくなる。詰将棋を図面から覚えて考えるっていうのは、頭の中に盤が作れて、
  動かすことができるかどうかってことだと思ってます。
   例えば中盤で十手から二十手先を読むとき、頭の中で考えた盤で、読んで、形勢判断までする。日ごろから
  詰将棋でそういう訓練をしておくと、より鮮明に、深く読めると思うんです。
   駒が多いと最初は難しいですから、少ない駒数の詰将棋から訓練しましたね。今は大抵のものは出来るよう
  になりました」

◇自然体で勝負に臨む◇

― 将棋は、いつも同じ力が出せるとは限らない。非常に環境や精神的なものも作用してくるゲームだと思うの
  ですが、メンタル面で気をつけてることはありますか?

久保 「メンタル面については自然体ですね。プレッシャーとかもあまり感じないし、相手によって特に意識したり
  はしないです。ああしたいこうしたいと思ってしまうとプレッシャーになるんで、極力自然体でいます」   


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