| 将棋 「強い自分を信じる」 〜囲碁の武宮正樹名人〜 |
NO.1312 |
2005.3.24作成
BOOKOFFに寄った時、ちょっと前の本ですが、囲碁の武宮正樹名人の「強い自分を信じる」(小堀勝亮著)
という本を見つけました。興味があったので、買って読んでみました。その中から、一部紹介したいと思います。
自分自身を信頼する
将棋や囲碁の世界に限らず、プロとして通用する人間は、いわば”その道の天才”と言える。ただ一人も俊英で
ない者はいない。もちろん豊富な勉強量の裏付けがなければならないが、最後にものを言うのは、ズバリ才能で
ある。
そしてもう一点、こうした人物には、ある共通したものを感じるのである。この要件こそが”超一流”の条件、とも
言えるものだ。
条件とは、自分自身に対する絶対的な信頼である。自分に対する信頼がなければ、厳しいプロの世界で一日
たりともプレーすることは不可能であろう。スポーツといわず、あらゆるプロがプロとしてやっていく根幹をなすもの
は、自分自身に頼れることだ。
「ボク(武宮)は五十年に一人の天才です」
こう言い切れるのは、自分に対する信頼があるからに違いない。
筆者はこの発言を武宮の名人就位式で初めて耳にした。新名人と親交のある大学教授の祝辞の中で披露
されたものだった。
「えェ!?」
という思いで聞いた会場の多くの人達に教授は、
「これは本人がそうだと語るのですから間違いない」
と付言した。これを聞いたとき、少しもイヤ味を感じなかったのは、広い会場の中で一人、筆者のみではなかった
であろう。
いつ、どんなときでも、チャンスとあらば、
「オレに任せておけ!」
と言いきれるのは自信だけではない。その件の処理についてはエキスパートである自分が最も適任者だから
絶対に悪いようにはしないと言い切れる人物は、たとえ好機でも危機でも「良い仕事」ができる。反対のケースは
まずダメである。
「頼むから、その仕事は自分に回ってこないでくれ!」。これでは、ことに当たる前から結果は見えている。
厳しいプロの世界では、言い訳が通用しない。結果を受け入れるしかないのだ。勝てなかった言い訳はみにくい
だけだ。
それに”勝負の世界”は「勝ってなんぼ」だ。
一局の勝負を戦うとき、必ず何度か訪れる難局でも、「ここがオレの真価の見せどころ」と自分に絶大の信頼を
おくことができる者こそ、プロの資格があると言えよう。
それは、つきつめていくと”自分自身に全幅の信頼をおける人物”ということになるだろうか。武宮がまさにそう
だ。
武宮はビッグ・マッチに臨んでも「信頼できるのは自分自身」と固く信じて碁盤に向かう。
「自分の感性を信じて」打つと、おのずから美しい碁ができあがると語る稀有な棋士である。
”美しい碁”とは絵画でも同じだが、無駄な線がなく一切の余計なものをとり除いた簡潔な図形を想起されればいい
だろう。言葉でもそうである。”簡にして明”、これでこそ言葉は美しい。碁も枝葉末節に目がいくようでは”美しい
碁”とはほど遠いと言わねばならない。