| 将棋 「仕事力」 〜いかにして力を磨くか〜 |
NO.1345 |
2006.2.12作成
「朝日新聞」の1月22日号の求人コーナーに、「仕事力」という題で、羽生善治四冠の文章が載っていました。
毎週日曜日の4回にわたる読み物のうちの3回目で、「いかにして力を磨くか」ということが書かれていました。
ちょっとためになる文章だったので、紹介したいと思います。
いかにして力を磨くか
強くなるための私のやり方
アマチュア時代から今日まで将棋の学び方は変わっていません。そのプロセスはシンプルに四つの段階を経て
います。最初にするのはアイデアを頭に思い浮かべること。次はこういう手を使って対局しようと新たな発想を
考えるのです。
そして次にそれがうまくいくだろうかとさまざまに検証していきます。盤に向かい、あるいは前例を調べ、自分が
考え付いたアイデアを成功させるにはどうすればいいのか、徹底して時間をかけます。相手は当然強敵ですから、
こう打ってくるだろうとか、あの手を使うかもしれないと一手一手細かく検証していくのです。
新しいアイデアだと思っていても過去に同じ手が用いられたかもしれないし、類型があったかもしれません。その
手は勝ったのか、どのような展開をしていったのか。最初のアイデアで戦うためにこの検証のプロセスは非常に
大切だと思います。
そして実践に臨む。ところがどれほど検証して準備していても、相手は思わぬ手を打ってくるんですね(笑い)。
そうなったら直感を信じて進んでいきます。
対局が終わればまた検証です。相手や自分がどこでミスをしたのか、どの手を打ったからアイデアが生きた
のか、あるいは失敗したのか、細部に至るまで明確にします。ずっと絶え間なくこも繰り返しで強くなれる。どの
段階が抜けても、もろくなりますね。
満たされる気持ちを大切にしていく
いつも対局が始まる前には、やるだけのことはやったし、落ちついて明鏡止水の心境でいこうと思うのですが、
実際にそんなことはできない(笑い)。平常心でいたいというのは理想であって、長時間集中して対局していると
根気や集中力が続かなくなります。最近よく言われる「切れる」瞬間が私にもありますが、そこでもうひとがんばり
という心のありようが大事なのかなと思います。
また私は、勝負の世界にいながらも一戦ごとの勝敗にこだわるタイプではありません。闘争心を持ってしまうと
それが空回りして、余分な力が入ってきてしまうし、いい手を探すという行為のときにその感覚が邪念となって判断
を曇らせるからです。ただ漠然と目の前の盤面を見て、この状況をどうするかという視点を持つほうが、より洗練
された判断ができると考えているのです。
対局によって充実感が得られるかどうか。勝っても負けても、例えミスが多かったとしても、自分が思い描くいい
将棋が指せたかどうか。そういう自分の中の満たされる気持ちを非常に大切にしています。長い間将棋の世界に
いてもなお、毎回違う発見がある、学ぶことがある。それが私にとっては大きなやりがいだからです。(談)