将棋 「最強将棋道場」B
         〜四天王インタビュー(佐藤編)〜
 NO.1353 

2006.3.28作成

 前回の続きで、「最強将棋道場」〜四天王が強くなるコツをキミに直伝!!〜(小学館)という小学生向けの本

からです。その中に、四天王インタビューというコーナーがあり、上達のヒントとしてわかりやすく、大変勉強に

なりました。今回は、佐藤康光棋聖(当時)のインタビューから、少し紹介したいと思います。


四天王インタビュー  ―佐藤康光棋聖―

ゲームを作る喜びと、それを勝つ方向に追いつめていく喜び。その2つが将棋の魅力!

―佐藤先生はどんな子供だったんですか。
佐藤 一口で言えば、凝り性で熱中するタイプだったんです。ふつう子供ってすぐにあきちゃって、他のことを
   やりだすんですが、僕はずーっとひとつのことをやってられました。集中力があるのか、あきらめが悪いのか、
   どっちだかわからないですけど。だから長時間粘るというか、考え続けることを別に苦にしない才能が
   ありました。
―将棋に出合ったのは?
佐藤 覚えたのは小学1年生の時です。その頃は、サッカーや野球もやってましたし、ローラースケートや
   紙飛行機に凝ってみたり。最初は将棋もそういう遊びのひとつで、ポケットゲームみたいなやつで休み時間に
   やり始めました。そのうち休み時間だけじゃ遊び足りなくなって、授業中にもこっそり、ノートにボールペンで
   枠を書いて、駒は鉛筆で書いて、消しゴムで消しながら動かしたり…。これで夢中になって、すぐに将棋教室
   に通うようになりました。
―それだけいろんな遊びの中から、将棋が特別に好きになった理由はなんだったのでしょう。
佐藤 白黒はっきりつくところと、なんだか自分で答えを作っていくような楽しみがあるところですね。将棋を序盤と
   終盤で考えると、面白さが2つあると思うんです。序盤のオープニングっていうのは、自分で「どんな絵を
   描こう?」という感じ。作戦やフォーメーションの想像力っていうんですかね、自分独自のものを作り出していく
   楽しみがある。そして終盤の寄せ・詰めの部分は、必ず勝つ答えがあるわけですから、それを自分ひとりの
   力で切り開いて、算数の答えを解くみたいに探していく楽しみがある。
―なるほど、2つだ。
佐藤 僕はもともとボードゲームがそうとう好きだったんです。人生ゲーム、社長ゲーム、億万長者ゲームなんかを
   よくやっていました。そのうちやるだけじゃあきたらず、自分で作るようになりまして。新幹線ゲームとか、
   大阪一周ゲームとか(笑い)。サイコロをふって進んでいくすごろくみたいなものを作っていた。あとは、地図と
   時刻表を見るのが好きだったから、自分で運行ダイヤを作ったり。
―わぁ。そういう佐藤少年のところにある日、新ボードゲーム・将棋が現れたんですね。
佐藤 盤上で駒を使ってゲームを作る喜びと、それを最終的に勝つ方向に追いつめていく喜び。ハマりましたね
   (笑い)。おまけに将棋は、サイコロなどの運任せじゃないところがよかったんです。
―負けたら全部、自分ひとりの責任ですもんね。
佐藤 負けたら、なんでそうなったのか?とショック。僕は将棋に負けてよく泣きましたよ。
―泣きましたか。
佐藤 将棋教室では周りはみんな大人でね。そこに僕ひとりだけ子供がいるんです。で、負けたらワンワン泣く。
   大人たちは困ってたでしょうねぇ。すごく負けず嫌いの自信家だったんです。僕は4歳からバイオリンを習って
   たのですが、バイオリンは勝ち負けはつきませんから。
―勝ち負けの衝撃は、そりゃあ大きかったんでしょうね。
佐藤 将棋を覚えてバイオリンの練習はおろそかになったくらいです(笑い)。初手5八飛で中飛車にして、銀を
   4八と6八にあげて、「さぁ、どんな作戦で行くか?」なんてばっかりやってましたから!
―そのうちに将棋大会に出るようになるわけですか。
佐藤 その頃のことはあまり覚えてないんですよ。
―あら、1分間に1億手を読むという緻密流の先生が…!?
佐藤 僕、記憶力が悪いんです(笑い)。でも大人に混じってベスト8とかになって「天才少年」と新聞に書かれたり
   しました。
―でも、負けたら泣く。
佐藤 そうですね(笑い)。

合理性だけでは天下は取れない!必要なのは自分だけが持つ”感性”。

―その頃の佐藤少年はどうやって強くなっていくんですか?
佐藤 将棋を指しているうちに、考える種ができてくるんです。「こうやったらどうなるんだろう?」という種です。
   それをいろいろと組み合わせて考えるうちに、自分なりの新しい手が発見できる。先生に教えられることや、
   本に書いてあることをうのみにしたり、常識にとらわれたりしていてはダメです。答えを自力で解決する回数が
   増えていくと、その分、力がつくんです。
―そうやって身につけた力というのは、一見、何かつかみどころのないぼんやりとしたものだけれど、自分にどんな
 力があって、どんな力がないのかの区別はハッキリしてきますよね。
佐藤 そうでしょうね。そして一番大事なことは、自分のいいところを自分でみつけて伸ばすことです。僕はもし、
   長所を伸ばす作業と弱点を克服する作業があったとしたら、弱点を克服する研究はほとんどしないです。
   長所を伸ばす。だから自分自身は相当アンバランスな人間かもしれないけれど(笑い)。
―アンバランスでもいいんですか?ふつうは弱点を克服することが強くなるやり方で、合理的な方法な気がします
 けれど。
佐藤 でも、それだとなかなか天下を取れないんじゃないですかね。合理性はそんなに必要ないと思うんです
   けど、僕は。
―合理では天下は取れない?
佐藤 合理より感性でしょう。感性を磨いて伸ばさないと取れないでしょうね。大切なのは人に流されないことなん
   です。たしかに過去の歴史というものもありますから、正しいものは正しいんですけど、それでも、自分なりの
   モノサシを作っておかなきゃダメです。人の言うことを信じているだけでは強くはなれないと思いますよ。

将棋に必勝法がある!そう信じられなければやっている意味はない。今、10%の地点だ!

―なるほど。プロになって研究が進んでくると考える種というのは減っていくんですか?
佐藤 将棋を研究すればするだけ種が減っていくと思うでしょう?実は逆で、種が積み重なって、ますます増えて
   いくんです。だからプロはとっても大変なんです(笑い)。
―ひゃー。次から次へと考える種が増えるのかぁ。
佐藤 その種は膨大ですから、将棋は極められない難しいゲームであると思います…けれど、だからといって
   「極められない」と思ったことはないですね。
―それは、もしかして、佐藤先生は必勝法を探しているってことですか!?
佐藤 だって自分なりに解決していけば、ひとつずつは謎は確実に減るわけですから。
―必勝法はあるんですか?
佐藤 あると信じています。みつかったら将棋をやめてもいい。
―じゃあ、佐藤先生は今現在、将棋の必勝法の何%くらいをわかっているんですか?これは気になるなぁ。
佐藤 いやあ、まだまだです。
―どれくらい?
佐藤 渡辺明君が「将棋の60%ぐらい理解している」っていう記事を見て仰天しましたね。彼は20歳にしてその域
   に達しているのかと思って。僕は10%もいってないでしょう。でも、僕はみつけても、たぶん教えないでしょう
   ね、誰にも。
―『将棋必勝法』という本を書いたりしないんですか?ベストセラーまちがいなしですよ。
佐藤 うん、教えないと思いますよ、たぶん。
―じゃあ佐藤先生だけ連戦連勝になっちゃいますね(笑い)。
佐藤 まぁ実際問題、必勝法の発見は、人間の記憶の容量と脳みその容量では無理だと思いますね。無理なん
   ですけど、まあできそうな気もするし。なんとも言えませんけど(笑い)。「できそう」「自分はみつけられそう」
   っていう自信がないとやっていけないですからね。

得意戦法は、「人がマネしない将棋」。これを極めていくことが強さの秘密なんだ!

―佐藤先生、かっこいいです!
佐藤 僕はあまり人のマネをしないで将棋を指したいんですよ。得意戦法は「人がマネしない将棋」。でも、自分は
   正しいと思ってるんですけど、あまり評価されていないみたいですが。
―新しいものを作っていくぞ、という気合は、対局からもすごく感じられますよ。
佐藤 今の将棋は、とくに序盤なんですが、どこか研究の発表会みたいなところがあって、戦っているというよりも
   確認しあっている感じなんです。だから未知の局面になって、終盤の一手争いで読み切れずに指さなきゃ
   いけないなんて時が、僕は一番好きです。もう本能で指すしかないって状況。対局者の個性とか真の姿が
   出てきますから、もう殴り合いに近い感じで、快感があります。まるで格闘技をやっているような気分なん
   です。
―それって、怖くないですか?
佐藤 怖くなったらまずいでしょうね。自分の感覚を信じるだけです。だから自分に絶対的な信頼があれば、別に
   なんてことはないですから。
―佐藤先生はなんでそんなに絶対的な自信があるんですか?
佐藤 なんででしょうね(笑い)。
―では最後の質問。ライバルに勝つ方法を教えてください!
佐藤 自分に対する絶対的な自信!それが揺らいでるうちはライバルには勝てないでしょう。
―そうくると思ってました!    


   ホームへ戻る    次号へ進む