将棋 「最強将棋道場」D
          〜将棋ソフト×プロ棋士〜
 NO.1355 

2006.3.31作成

 前回の続きで、「最強将棋道場」〜四天王が強くなるコツをキミに直伝!!〜(小学館)という小学生向けの本

からです。その中の、四天王インタビューというコーナーを紹介してきましたが、最後に、「将棋ソフト×プロ棋士

棋力進化論」という高野秀行五段と将棋ソフト激指シリーズのプログラマーの鶴岡慶雅さんのスペシャル対談が

ありました。ちょっと興味があったので、少し紹介したいと思います。


将棋ソフト×プロ棋士 棋力進化論

     (プロ棋士 高野秀行五段、将棋ソフト激指シリーズのプログラマー 鶴岡慶雅さん)

将棋ソフトが強くなった理由

高野 「激指」強いですね。何局か指したんですが、平手で二回も負けました(笑い)。
鶴岡 ありがとうございます。
高野 今、将棋ソフトはアマ四段くらいの棋力があるといわれています。ここまで強くなったのは将棋の考え方=
   プログラミングに変化があったからですか?
鶴岡 基本的なプログラミングは最初から変わっていません。まず、ほとんどの定跡や前例のある局面は覚えて
   いますので、その通りに指します。
高野 しかし、まったく同じ棋譜が存在しないように、いつかは未知の局面にいきますよね。
鶴岡 そうなったら読みに入ります。読みで大切なのは…。
高野 形勢判断ですね。駒の損得、駒の働き、玉の堅さなどから先手と後手のどちらが有利かを判断する。
鶴岡 そうです。それを将棋ソフトでは「評価関数」というもので数値化するんですよ。つまり、数値でどちらが有利
   かを決めちゃうわけです。
高野 形勢判断を数値化!それは画期的ですね。
鶴岡 どの手を指すかは、例えば「3手の読み」ってありますよね。
高野 自分がこうしたら、相手がこう来て、さらに自分がこうする、という読みの基本ですね。
鶴岡 その3手の読みで、可能性のある局面を全部考えて、評価関数で点数をつけちゃうんですよ。後はお互い
   が自分にとって一番いい点数の手を選ぶと考えて、指す手を決めるという、単純というか力技ですね(笑い)。
   将棋ソフトが強くなった理由は、読みの範囲の決め方や、評価関数の点数をより正しくなるように調整して
   いることが一番で、後はパソコンの高性能化で読める量が増えたこと。つまり、より正確に多くの量を読める
   から強くなったわけです。
高野 人間は考えられる量に限界があるので、強くなるには指し手が正確になるのはもちろん、局面ごとに考える
   指し手の候補を絞れるかが大事なんですよ。将棋ソフトは全く逆なんですね。

プロ棋士の先生方に「序盤の創造力」ではまだまだおよびません

プロ棋士との棋力の差は「序盤」にあり!

鶴岡 今のパソコンだと一秒間に数十万通りくらい読みますよ。
高野 そんなにすごい量を読んでもまだプロ棋士のトップには全然及ばないところに、将棋の奥深さを感じますね。
鶴岡 終盤などはまだいい勝負をできると思っているんですが、序盤は全然駄目ですね。
高野 ああ、序盤ですか。
鶴岡 手を創造するということをコンピュータはできないんです。例えば、人間だと序盤で玉の囲いを見てこれは
   こっちが堅いとか、ここでさばき合っても大丈夫とかいうのは、直感的に判断できるじゃないですか。でも、
   コンピュータにそういう判断をさせるのはむちゃくちゃ難しい。今は序盤は定跡に頼ってる状態です。なので
   あまり定跡がない「向飛車」などに弱かったりするんですよ。

今の将棋ソフトは「逆転負けの少ない棋士」ですね

「終盤」は将棋ソフトにはかなわない!?

高野 それはいいことを聞きました(笑い)。序盤とは対照的に終盤は強いですね。粘り強いというか、逆転負けが
   少ない。
鶴岡 終盤は評価関数でかなり正確な判断をできますので。さらに、コンピュータには人間のような感情がない
   ので、いくら形勢が悪くなってもあきらめないですから。形づくりとかもせずに常に最善手を指します。また、
   こちらが優勢で決まりそうだから決めにいこうかな、ってことも絶対せずに、最も勝ちやすい道をいきます
   から、結果として逆転負けは少ないですね。
高野 しかも、詰みがあったら絶対見逃さない(笑い)。
鶴岡 詰む詰まないに関しては、コンピュータの最も得意分野ですから(笑い)。

10年後は人間と将棋ソフトはどっちが強くなるか

高野 将棋ソフトの強さの伸びは、この先どうなると思います?例えば、10年後にはプロ棋士より強くなっている
   可能性とかは…。
鶴岡 年々強くなっていくとは思うんですが、やっぱりレベルが上がれば上がるほど、序盤の重要性というのが
   増してきますので…それに、すでに一般のユーザーさんよりは強くなってますよね。なので、あまりこれ以上
   強くなる必要性もあるのかといえばそうでもないような…。それよりはより多くの人に、将棋ソフトを使うことで
   将棋が強く、好きになってもらえるようにしたいですね。終盤に強いからといって、詰み検索だけに使われる
   だけはやっぱり寂しいじゃないですか。なのでアイデアを色々考えています。

先手必勝か後手必勝かわかる日がくる!?

高野 棋力が究極に進化すると、先手必勝か後手必勝かわかってしまう可能性もあります?
鶴岡 あっ、それはもう全然わかりません。それをやろうとすると、初手に香車が1つ上がるような手も省略しちゃ
   駄目なんですよね。もしかすると、それが最善手かもしれない。
高野 なるほど、なるほど。
鶴岡 だから、そういう可能性を排除してはいけないので、読みの総数が宇宙にある原子の数よりも大きくなって
   しまう。
高野 それは莫大だ(笑い)。
鶴岡 実は、六マス×六マスのオセロに関しては、後手必勝という結論が出せたんですよ。なので七マス×七マス
   もすぐ出るだろうと思ったら、七×七だと爆発的に読む量が増えちゃってできていない。なので、将棋は当分
   無理だと思いますね。
高野 じゃあ、私たちが生きている間は大丈夫ですね!振り駒で勝負が決まっちゃったらつまらないですし
   (笑い)。


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